ロッテと楽天どっちが先に決めるの?鈴木大地と美馬学のFA移籍による人的補償

プロ野球ファンならご存知の通り、楽天イーグルスの美馬学投手が千葉ロッテへ、千葉ロッテの鈴木大地選手が楽天イーグルスへ、それぞれFA移籍が決定しました。

制度上はFA移籍ですが実質的なトレードとも言えるこの状況で、FA移籍につきものが「補償制度」です。

昨日(2019年12月11日)に楽天とロッテが人的補償を選択する場合の「プロテクト外」リストを交換したとの報道がありました。

ロッテが楽天とFA人的補償のプロテクト名簿を交換

※日刊スポーツ 12/11(水)14:35配信

もちろん「金銭補償のみ」という選択肢もありますので、必ず誰かが人的補償によって移籍するわけではありません。

あくまでも人的補償を選択した場合ですが、石井GMからは「投手を選ばれたら、こちらも投手、野手なら野手になるかな」という発言がありました。つまり「先にロッテが」人的補償するか金銭補償のみにするかを選択し、人的補償がある場合はプロテクト外リストから1名を選択することが前提となった発言です。

それはその通りなので全く問題ないのですが、「なぜ楽天が後出しで良いのか?」といった疑問を持っている方や、ルールを知らない方が石井GMに過剰反応して批判する一部のファンもいるようです。

恐らくリストを「交換」したことや、FA移籍同士のトレードのような状況になったので「人的補償を決めるのも同時じゃないの?」というイメージが強いからではないかと考えられます。

結論から言えば「ロッテが先に決めて、楽天は後になる」が正解です。

その根拠となるFA移籍後の補償に関するルール(規約)を整理していきましょう。

FA移籍による人的補償・金銭補償とは?

よくニュースなどで「○○選手のFA移籍によって××選手が人的補償で移籍」といった報道を見たり聞いたりするでしょう。

例えば昨シーズン、2018年のケースで言えば西武ライオンズから炭谷銀仁朗捕手が巨人に移籍しました。そこで西武ライオンズは「人的補償あり」を選択し、巨人から内海哲也投手が西武ライオンズへ移籍しました。

また、西武ライオンズから楽天イーグルスに移籍した浅村栄斗内野手。この時は西武ライオンズが「人的補償なし」を選択したため、金銭補償のみとなり、楽天イーグルスから選手が移籍することはありませんでした。

このように、FA移籍によって選手を放出する側の球団には、移籍して入団する側の球団から人的補償をするかしないかを選択し、補償を受けることができます。
こうした人的補償と金銭補償を総称して「FA補償」と呼んでいます。

※以下、FA宣言した選手を「FA宣言選手」、退団した球団を「旧球団」、入団した球団を「獲得球団」と表記します。

つまり旧球団はFA宣言選手を失ったので、代わりになる選手あるいは金銭を獲得球団から受け取ることが出来る、というルールになっています。

補償とランク

旧球団の補償はFA宣言選手の「ランク」によって異なります。このランクはFA宣言選手の年棒によって異なります。

Aランク:上位1~3位
Bランク:上位4~10位
Cランク:上位11位以下

このうち、FA宣言選手がAランクまたはBランクの場合、旧球団は人的補償をするかしないかのいずれかを選択できます
これは規約に「Aランク又はBランクに属する者に限る」と明記されているからです。

言い換えればCランク選手はFA補償の対象外となります。そのため、同じく今年FA宣言したソフトバンクホークスの福田秀平選手は補償が不要な選手という条件もあり、複数球団が競合した要因の一つと言われています。

話を戻して、今回のテーマは鈴木大地選手と美馬学投手ですが、いずれもBランクです。
つまり、ロッテと楽天、双方が双方からFA補償を受けることが出来る状況となったのです。

金銭補償の決め方

先に金銭補償をみてみましょう。直近でいえば浅村選手がそうだったわけですが、この「金銭補償」は2通りあります。

1、人的補償が「ある」場合
2、人的補償が「ない」場合

浅村選手のケースでは西武ライオンズが2、を選択しました。このように人的補償が「ない」場合は金銭補償のみとなります。
その際の金額の決め方は、FA宣言選手の前年の年棒額に対して以下の割合となります。

1)Aランクに属する場合:80%
2)Bランクに属する場合:60%

一方で、1、の人的補償が「ある」場合を選択すると、旧球団は獲得球団から選手を1名選択(獲得)でき、なおかつFA宣言選手の前年の年棒額に対して以下の割合で金銭補償を求めることが出来ます。※選択できる選手は後述します

1)Aランクに属する場合:50%
2)Bランクに属する場合:40%

人的補償の決め方

前述の通り旧球団からAランクまたはBランクの選手が移籍した場合、人的補償ありを選択すれば獲得球団から選手を獲得できます。
人的補償の対象となる選手は獲得球団が「プロテクトリスト」を作成し、そこから外れた選手となります。

このようにプロテクトリストから外れた選手のリストが旧球団に渡るため、報道などでは「プロテクト外リスト」と呼ばれています。

なお、獲得球団がプロテクトできる選手は28名で、外国人選手とその年にドラフトで獲得した選手は除かれます。
今回の楽天イーグルスで言えば、外国人選手、2019ドラフト入団選手、そしてFA宣言して残留した則本昂大投手は除かれます。これらの選手「以外」から28名を旧球団が選択し、いわばそこから漏れた選手が「プロテクト外リスト」にリストアップされることになります。

どちらが先に決定するのか?

FAについての前提条件をまとめましたので少し長くなりましたが、いよいよ本題に入ります。

今回、ロッテと楽天がそれぞれFA補償を受けられるため、どちらが先に補償内容を決定するかが注目されています。
冒頭の石井GMの発言や結論でも書いた通り「ロッテが先で楽天が後」になるわけですが、これはきちんとルールで決まっています。

まず初めに大事になるのが、FA宣言選手が獲得球団と契約合意した日付です。この日付はNPBが「公示」した正式発表の日付で、今回のケースではそれぞれ下記の通りです。

鈴木大地選手:2019年11月27日
美馬学投手:2019年12月3日

つまり、鈴木大地選手の旧球団であるロッテが楽天より先に補償内容を決める、美馬学投手の旧球団である楽天がロッテより後に決める、ということになります。

これには期限があるためです。別に楽天が先に決めてもいいのですが、ルール上はロッテが先に決めるように定められているので、それを見てから判断する、というのが合理的です。

では、そのルールを見てみましょう。

プロテクト外リストの提出期限

プロテクト外リストの提出には期限が設けられています。

それは前述の公示日の2週間以内となっています。
つまり鈴木選手の獲得球団である楽天の提出期限が12月11日、美馬投手の獲得球団であるロッテの提出期限が12月17日でした。

逆に言えばルール上は上記の限りですので、期限内であればいつ提出しても良いわけです。
恐らく、それを今回は両球団が合意のもとに「同時に提出して交換した」という流れになったと言えます。

結果的に楽天が提出期限ギリギリとなったわけではありますが、それと同時にロッテも提出したというだけでの話、とも言えます。

補償決定の完了期限

では、実際にFA補償の内容をいつまでに決定しなければならないのか?
そのルールもきちんと決められています。それが以下の通りです。

前2項に規定されたすべての補償は,コミッショナーから当該選手の契約締結の公示が行われた後,40日以内に完了しなければならない。ただし、金銭による補償については,旧球団の同意がある場合は,期間を延長することができる。

つまり、人的補償に関しては40日以内に完了しなければならないので、具体的な選手の決定、発表はもっと早い段階で決める必要がある、ということになります。

このルールによってロッテの完了期限は2020年1月6日まで、楽天の完了期限は2020年1月12日まで、となります。

このため、仮にロッテがギリギリまで検討したとしても楽天よりは先に決定、完了する必要があり、必然的に人的補償ならロッテが選択した選手を踏まえたうえで、楽天がどうFA補償を選択するかを決定できることになります。

まとめ

今回はFA移籍した選手の実質的なトレードとなったので、FA補償もやや複雑となりました。

最終的に人的補償があるのかないか、全く分かりません。
一部報道では先に決めるロッテが人的補償ありを選択する可能性が高いとしており、その場合は楽天も人的補償ありにするのが石井GMの方針のようです。

昨シーズンは巨人の内海投手、長野選手がプロテクトされておらず衝撃が走りました。

果たしてロッテがどういった決断を下すか、それによって楽天がどう動くか、今年最後の注目ニュースになりそうです。

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