FA権とは?取得条件と行使理由、行使に対する見解

2018年のプロ野球は全日程を終了し、ソフトバンクホークスの日本一で幕を閉じた。
この後は日米野球が開催予定で日本代表としての国際試合は控えているものの、各球団は来シーズンに向けて動き出している。
各球団の試合が無いこの時期だが、ファンとしても球団関係者としても最も注目している話題と言えば、FA権行使による選手の移籍でしょう。
連日のようにスポーツニュース、プロ野球ニュースの話題となっているFA権について、その基本的な条件と行使する選手、行使しない選手の動向や理由、そしてファンの間で起こる賛否両論について私なりの見解も示したい。

FA権とは?

そもそもFA権とは何か。FAとはフリーエージェントの略称で、フリーエージェント権のことである。

一般的に、ほとんどのプロ野球選手が最初にプロ入りする際、どの球団に入団するかが決まるのはドラフト会議である。このドラフト会議では各球団が獲得したい選手を指名し、他球団と競合した場合はくじ引きによって交渉権を獲得する。
つまり、選手にとってみればプロ入りするために自分で球団を選択することは原則として出来ない。(例外もあるが、事例として少ないのでここでは割愛)
もちろん、まだプロ入り前の段階で自分がどの程度通用するかも分からない状態である。自分から「私はこの球団に入りたい」と言ったところで球団も相手にしてくれない。というより、やはり前述のドラフト会議によるドラフト制があるため、入団に関する自身の希望は公には出来ないものであり、選択する権利も無いのが現状の日本のプロ野球である。

しかし、一般社会に置き換えれば個人がどこかの企業に就職した後、その会社を退職し、別の会社に転職することは一般的。
プロ野球選手の場合は報酬の金額も大きいだけに、球団との契約を密に結び、またプロ野球機構のルールに沿った契約内容となるため、簡単に言えば一般企業とは異なり、「明日から別の会社に行きます」とはいかないのである。
一般社会でも、現在所属している会社に在籍しながら、実はこっそりと転職活動をしていて、転職先から内定が出た途端に現在の会社を退職する、なんてことはなかなかやりづらい。ただ、やろうと思えばできるのが一般社会だが、プロ野球選手の場合は規約上難しいのである。
これは、やはりプロ野球界という狭い業界でもあることは事実だが、決まりは決まり。

少し話が逸れたが、FA権とは、そのようにドラフトで入団した球団に一定期間在籍することでプロ野球選手として十分な実績を積んだと認められ、希望する場合には、その権利を行使することによって他球団へ移籍できる、という権利が与えられるものである。

このFA権には国内FA権海外FA権の2種類がある。
今回は主に国内FA権について書いていくが、簡単に言えば国内FA権は「国内の球団ならどこでも交渉できる権利」であり、海外FA権は「海外(主にメジャーリーグ)の球団も含めてどこでも交渉できる権利」に分かれている。

FA権の取得条件

FA権を取得するためには、先ほども書いたように一定の条件がある。
細かい条件は割愛するが、基本的には出場選手登録(一軍登録)145日を1年として換算し、累計8年経過することで取得が可能となる。
なお、入団した時期や高卒・大卒・社会人かによっても異なる。
(参考)
2006年までのドラフトで入団した全選手:累計8年(通算1160日)経過で取得 
2007年以降のドラフトで入団した高卒選手:累計8年経過で取得
2007年以降のドラフトで入団した大卒・社会人選手:累計7年(通算1015日)経過で取得

ちなみに海外FA権の取得は全選手において共通で、累計9年経過すれば取得可能である。

このように、ドラフトで入団した球団に8年ほど在籍することで、初めて他球団へ移籍できる権利を与えられる。
とはいえ、在籍と言ってもただ在籍していれば良いわけでは無い。
取得条件にも書いたように、「出場選手登録(一軍登録)」で計算されるため、一軍で継続的に在籍している必要がある。
出場試合数ではないので必ずしもレギュラーで出場し続ける必要はないが、厳しい世界であるだけに、基本的にはレギュラーの座を獲得した選手であればあるほどFA権も取得しやすいということにはなる。

ちなみに、FA権を取得する前に他球団に移籍することもあり、その場合は金銭トレードや交換トレード、あるいは在籍していた球団から戦力外通告等で退団した後、他球団が獲得してくれれば入団できる可能性はある。
しかし、いずれの場合もチーム事情での移籍であって自分の意志とは言えない。

つまり、プロ野球選手にとって唯一自分の意志で行きたい球団を選択できる権利なのである。
(もちろん、現状に満足している場合、FA権を取得していても行使せずに残留する選手も多く存在する。)

なぜFA権を行使するのか?

私たちのような一般社会では、最初に入社した会社に何年在籍していても、自分の意志で転職することは可能である。
一昔前は「石の上にも三年」ではないが、少なくとも三年、業界によっては10年、20年と在籍しなければ一人前として認めてもらえず、転職することも抵抗感があった。しかし、ここ最近では20代の転職率が上がっており、終身雇用制度が崩壊しつつある時代において、一つの企業に長い年月在籍すること自体が変わりつつある世の中となっている。
入社してみて「周りの人と合わない」「仕事の割に待遇が伴っていない」といった理由で転職を希望する人も多いであろう。事実、希望すれば転職することもできる。

とはいえ、前述の通り、プロ野球選手にとってそれは許されない。
もちろん、入団したばかりの頃は技術も実績も乏しく、入団したチームに育ててもらい、実績を積み重ねて一流選手へと成長していく。そのため、まずはプロ野球選手として通用するためには「周りの人と合わない」「待遇が悪い」といった不満を言っている場合ではない。

しかし、前述の通りFA権を取得できるのは一軍で活躍していることが前提となるため、徐々に自分自身の意志や希望を表に出したくなる時期があっても良い。それがちょうどFA権を取得するというきっかけではないかと考えている。

では、なぜFA権を行使するのか?
前提として、FA権を取得するタイミングというのは、選手にとって最も活躍できる状態にあり、更なる高みを目指す時期となる。
また、同時に現役生活というのはそう長くはないため、残りの現役生活をどのように過ごすか、と考える時期でもある。

過去の事例からFA権を行使した選手の傾向として大きく分けると、以下のような理由に分かれるのではないかと考えている。

もっと良い待遇のチームに行きたい

これは最初に入団したチームの資金力や提示する年棒、契約条件に最も関わる理由である。
やはりプロ野球選手であるからには、高いレベルのパフォーマンスを見せれば見せるほど、それに見合った待遇(報酬)を得たいと感じるのは人間として当然である。
つまり、より高い年棒であったり、より長期の契約年数を提示してくれる球団に移籍したいため、FA権を行使する。

出場機会の多いチームに行きたい

待遇面と似ているが、こちらは割とプレーに直結する方で、現在のチーム状況的に出場機会が減っているが、他球団に行けばもっと出場機会が増える可能性が高い場合に行使することになる。
どのポジションであれ、その時のチーム事情によってレギュラー争いが厳しい時と不足している時はある。
そういった状況で上手く双方がマッチすれば、より出場機会が増え、活躍の場に繋がることになる。

優勝できるチームに行きたい

これは最初に入団したチームの実力に直結する理由である。
近年で言えば、セ・リーグだと広島カープ、パ・リーグだとソフトバンクのようにAクラス入りの常連であり、勝てる可能性が高いチーム、優勝できる可能性が高いチームに移籍することによって、限りあるプロ野球選手としての現役生活で「優勝」というかけがえのない経験をしたいため、FA権を行使する。
プロ野球において、優勝を目指していない球団など存在しない。しかし、現実的に資金力や育成などにおいてチームの実力差に開きが出てきているのは事実である。より優勝できる可能性の高いチームに所属することは、自分自身のレベルを上げることにも繋がる。

憧れのチームに行きたい

これは最初に入団したチームがどうこうというより、自分自身の好みによる理由である。
純粋に、「子供のころから憧れていたチーム」であり、「このチームのユニフォームを着てプレーしたい」という希望からFA権を行使する。
こればかりは、その人個人の夢や希望であるため、チャンスがあるのなら実現したいと思うのは自然なことだ。

故郷のチームに行きたい

先ほどチームの実力差は開いていると書いたが、実際のところ昨今では以前ほど極端な開きがないとも言える。
つまり、どのチームも万遍なくAクラス争いができるような状態にあるため、最近ではこの理由で移籍する選手も少なくない。
我らが楽天イーグルスの岸孝之投手は、地元仙台出身であり、大学まで過ごした、まさにゆかりのある地元球団に移籍した形になる。
自分を育ててくれた地域にある球団で地元に恩返しをしたい、という想いでFA権を行使する。

まとめと見解

このように、プロ野球選手がFA権を取得することは、自分自身の意志で移籍するかどうかを決めることができる唯一のチャンスである。

とはいえ、仮に自分が応援するチームの主力選手が他球団に移籍してしまったら…
たとえどんな理由であれ、決して気持ちの良いものではないだろう。
現実的に戦力として大きく影響するとともに、もし自分がその選手のファンだったら、など複雑な時期でもある。

こうした背景から、翌シーズンに、新球団に移籍した選手が移籍前のチームとの試合に出場すると、その選手に対してブーイングが起きるという残念なことをするファンもいる。
確かに気持ちは分かる。
しかし、それによって誰が得をするのか?誰が幸せなのか?

何度も書いているように、FA権の行使は選手に与えられた権利であり、チャンスでもある。
当然、在籍しているチームに対する感謝や恩があるのは間違いない。
しかし、それでも一度しかない人生。環境を変えたり、自分が望む条件だったり、暮らす場所だったり、そういった希望を表に出して悪いことなど一つもないのである。

この辺りは、どうも日本人的な気質が根強いのではないかと考えている。
「変化を嫌う」「情に熱すぎる」といったところか。

先ほど書いたように、移籍した後の試合でブーイングをすることは、とても残念である。
例えば、自分自身が転職したとして、転職した後にバッタリ前の会社の人に会ったとしよう。
その時、明らかに無視されたり、嫌みを言われたりしたらどうだろうか?
ブーイングというのはそういった意思表示とも言って過言ではない。
またブーイングに限らず、こうしたインターネットやSNSに、明らかに誹謗中傷、批判するようなことを書くのも残念である。

事実、自分が応援するチームにFA移籍によって大物選手が入団してくることだってあるではないか。
自分たちの時は良くて、出ていってしまったら悪く言うのは違う。
また、「移籍するなんて、これまでの恩を忘れたのか?」といった意見もあるが、それも違う。
恩や感謝が無いはずがない。しかし、何度も書いているが、それ以上に希望する条件や、夢を抱いていることがあるならば、その夢や希望のために新たな一歩を踏み出すのは人間として素晴らしいことである。

私自身は、もちろん良い選手が入団してくれるのは嬉しいことだが、移籍してしまっても、その選手はずっと応援したいという立場だ。
最近で言えば、FAではないが西田哲郎選手の活躍は嬉しいものである。

移籍を決める選手にも相当な覚悟が必要である。
仮に今より良い条件で移籍したとしても、これまで通りに活躍できる保証はない。もし移籍して活躍できなければ、退団したチームのファンからは批判され、移籍したチームでは活躍できずに批判される、というリスクも十分にある。

それでも、自分の夢や希望を追い求めるFA権を取得した選手たちの意思を尊重し、応援するのが私の見解となる。

他人の夢や希望を批判してばかりではなく、自分自身が夢や希望を追い求め、他人の夢や希望を応援できる人間でありたい。

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イーグルスファン通信【編集長】

イーグルスファン通信【編集長】

2006年の野村克也監督時代からのイーグルスファン。本格的に応援し始めたのは2016年頃から。関東拠点のため1軍の現地観戦はZOZOマリン、メットライフがメイン。交流戦でのハマスタ、神宮、東京ドームは外せない。 イーグルスファンならではのコンテンツを心掛けて執筆しています。

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