海外FA権と国内FA権の違いとは?松井裕樹投手の動向に注目!

首脳陣も選手も去就が注目されるオフシーズン。
2023年の今オフ、我らが東北楽天ゴールデンイーグルスは今江敏晃氏が監督就任。
渡辺直人氏が一軍ヘッドコーチに就任するなど、若返りが進んでいると言えます。

一方、選手に関しては炭谷銀仁朗捕手、西川遥輝選手といった実績ある選手の戦力外通告が公式発表。
銀次選手も戦力外通告との報道が出ていますが、こちらはまだ記事公開時点で、公式発表されていません。

こうした状況の中で、今オフ大きく注目されるのが松井裕樹投手の動向です。
海外FA(フリーエージェント)権を保有しており、その行使が注目されています。
もし権利行使が公言されるとメジャーリーグ(MLB)への移籍が濃厚と報道されています。

球団の生え抜き選手としてメジャーリーガーが誕生するのはイーグルスファンとして嬉しい限りです。
一方で今シーズンセーブ王に輝いた実績をはじめ、これまでの成績を考えれば大幅な戦力ダウンになるのも間違いなし。
複雑な心境ですが、私は海外(MLB)への挑戦を素直に応援したい気持ちです。

さて、今回のFA権については「海外FA権」となっています。
もう一つプロ野球選手の権利して「国内FA権」があります。

松井裕樹投手は海外FA権となりますが、国内FA権との違いとは何か?今回は整理していきます。

FA(フリーエージェント)権とは?

日本のプロ野球(NPB)において、選手がプロ入りする際に所属(入団)したい球団を選ぶことは、基本的にできません。
一番最初の入り口としては、ドラフト会議で指名されるのが一般的です。
※話を分かりやすくするため、逆指名など少数事例は除外します

とはいえ、選手本人が所属(入団)したチームで引退するまで現役生活をしたいとは限りません。
(もちろんその前に戦力外通告を受ける可能性も大いにあります)

こうした状況を踏まえ、NPBでは一定の条件を満たすと選手自ら、他球団へ移籍するための交渉・契約をしても良い、という権利を設けています。
それがフリーエージェント権です。

FA権取得の条件

一定の条件を簡単に言うと「一軍で出場またはベンチ入りし続けたかどうか」です。

具体的な条件は以下の通りです。

前提条件

セ・パ各リーグの年度選手権試合期間中に145日以上出場選手登録されたシーズンを1シーズンとして計算する

出場選手登録とは、簡単に言うと「試合前のベンチ入りメンバー」のことです。
その中からスタメン出場する選手、途中出場の選手、出場しない選手に分かれますが、いずれにしても出場選手登録の数がFA権取得の条件となります。

この前提条件をもとにした権利獲得条件が以下の通り。

国内FA権取得条件

合計8シーズンに達する

※ただし2007年以降のドラフトで入団した大学生・社会人選手は7シーズンで資格を取得

海外FA権取得条件

合計9シーズンに達する

※ただし、それ以前に国内FA権を行使した場合を除く

補足までに、以下の場合も条件として加味されています。
・出場選手登録日数が145日に満たないシーズンがある場合は、それらのシーズンの出場選手登録日数をすべて合算し、145日に達したものを1シーズンとして計算する
・一度FA権を行使して、その後NPB球団と契約した選手は出場選手登録が4シーズンに達したときに「海外FA」権を取得する
・故障者特例措置や投手の登録日数加算に関する特例措置などにより登録日数を加算する場合がある

国内と海外FA権の違い

ここで本題です。
2種類あるFA権はそれぞれ、名前の通り、権利行使後に交渉および契約できる球団の違いです。

国内FA権とは

NPBいずれの球団とも選手契約を締結できる権利

海外FA権とは

外国のいかなるプロ野球組織の球団も含め、国内外のいずれの球団とも選手契約を締結できる権利

つまり、移籍先の希望が国内球団のみなら国内FA権を行使して獲得を希望する他球団と交渉し、合意すれば契約締結となります。
一方、メジャーリーグ(MLB)に挑戦したい場合は海外FA権を行使しなければ、海外の球団とは交渉および契約ができません。

松井裕樹投手の場合は国内FA権も取得していましたが、行使せずにシーズンを重ね、この2023年オフに海外FA権を行使してMLBに挑戦するかどうか、これが注目されています。

ポスティングシステムとは?

NPBからメジャーリーグに挑戦したい場合、海外FA権以外にもう一つ手段があります。
それがポスティングシステムです。

ポスティングシステムとは、海外FA権を持たない選手がMLB球団に移籍する方法。
前述の通り海外FA権の取得には9シーズン必要です。

松井裕樹投手の場合は高卒1年目から一軍の試合に出場しており、10シーズンプレーした今オフでも、まだ28歳です。
まさに充実期、MLBに挑戦してもおかしくない、むしろすべきタイミングです。

とはいえ、そこまで待てないという選手もいるでしょう。
その場合はポスティングシステムを活用しますが、重要な条件があります。
それは所属している球団からの許可が必要、ということです。

今回はFA権についての記事なのでポスティングシステムについての詳細は割愛しますが、MLBに行くなら海外FA権かポスティングシステムのどちらか、となります。

イーグルスにおける海外FA権の事例

実際に海外FA権が扱われる内容としては以下のようなパターンが考えられます。
(もちろん他にもあるので細分化すれば様々なパターンとなります)

  • 1. 国内FA権を行使せず、海外FA権を取得する
  • 2. 国内FA権を行使して他球団に移籍後、4シーズン経過して海外FA権を取得する
  • 3. 海外FA権を行使せずに残留する

我らが東北楽天ゴールデンイーグルスに関していうと、以下のような事例があります。

福盛 和男(2007年オフ)

2004年オフに近鉄バファローズから分配ドラフトでイーグルスに入団した福盛和男氏は2007年オフに海外FA権を行使。
2007年12月にテキサス・レンジャーズへの移籍が決定。
生え抜き選手ではありませんが、球団史上初のメジャーリーガーとなりました。

岩隈 久志(2011年オフ)

イーグルス球団創設時を支えた岩隈久志氏は2011年オフに海外FA権を行使。
2012年1月にシアトル・マリナーズへの移籍が決まりました。

岩隈久志氏も近鉄バファローズからの分配ドラフトで入団した特殊ケースのため、球団生え抜きではありませんが、近鉄→楽天と実績を積んでからメジャーリーグへ挑戦した形となります。

※2010年にポスティングシステムでMLB移籍を試みるも交渉に至らず残留
※2014年にヤンキースへ移籍した田中将大投手はポスティングシステムを利用

今江 敏晃(2015年オフ)

今シーズン監督に就任した今江敏晃氏は2015年オフに海外FA権を行使して、イーグルスに入団しました。
このように海外FA権は、あくまでも「海外球団とも契約できる」権利であり、国内FA権も含まれていると言えます。

このようなご縁から監督就任まで至るのは本当に嬉しい限りですね。

岸 孝之(2016年オフ)

2023シーズンも先発ローテーションを守ってくれた、頼れるベテランとなった岸孝之投手は2016年オフに海外FA権を行使して、イーグルスに入団しました。
そこから8年が経とうとしていますが、いまだに現役で活躍し続ける姿は本物のプロフェッショナルです。

浅村 栄斗(2022年オフ)

記憶に新しいのは2022年オフ、浅村栄斗選手が海外FA権を行使せず、残留したことです。
浅村栄斗選手は2018年オフに国内FA権を行使して、イーグルスに入団。
イーグルスの在籍も長くなり、条件を満たしたことで海外FA権も取得しました。
もし海外FA権を行使すれば、NPB他球団はもちろんMLBへの挑戦も権利上は可能でしたが、イーグルスへの残留を決断してくれました。

今シーズンはホームラン王に輝くなど、まだまだ必要な存在です。ありがたい。

田中 将大(2022年オフ)

2021年にヤンキースから8年ぶりに復帰した、田中将大投手。
2022年8月に海外FA権を取得していましたが、オフに球団と交渉した結果、残留となりました。

今シーズンもいまひとつの成績で日米通算200勝も2024シーズンに持ち越し。
とはいえ、現時点で来シーズンの見通しは不明。
海外FA権を行使してMLBへ再度挑戦する可能性も、無くはない状況です。

松井裕樹投手は球団史上初のメジャーリーガーとなるか

いずれにしても、今オフ最大の注目は松井裕樹投手の海外FA権を行使するかどうか。
そしてMLBへの移籍が決まるかどうか、ですね。
権利を行使すれば獲得に名乗りを上げるMLB球団は一定数いるでしょう。

今年開催されたWBCなど国際大会ではボールが合わないといった理由から本来のパフォーマンスを発揮できていないのは事実です。
とはいえ国際大会は短期間であり、レギュラーシーズンに戻ることを考えたら仕方ない部分もあります。
もしMLB移籍となれば、そのための準備や努力をされるのは間違いないでしょう。

前述の通り、球団生え抜きのメジャーリーガー・田中将大投手はポスティングシステムでMLBへ移籍しました。
球団生え抜き選手が海外FA権を行使してMLB移籍が実現すれば、球団史上初となります。

まさに入団から一軍で活躍し続け、海外FA権取得の条件を満たし、満を持してMLBへ移籍する「王道路線」。

チームを去るのは残念ですが、MLBでもドヤ顔で活躍する姿は楽しみでなりません。

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