異例の2020年レギュラーシーズンを振り返るーパ・リーグ編ー

さて、12球団の2020年シーズンを振り返る企画。
第1回目はセ・リーグ編でしたが、第2回目の今回はパ・リーグ編です。

我らが楽天イーグルスは開幕当初、首位に立つなど良い状態をキープ。
優勝も夢では無いと思われましたが、8月22日に3位になってからは浮上のきっかけを掴むことができぬままシーズンが終わってしまいました。

セ・リーグは読売ジャイアンツの1強という印象が強いシーズンでした。
一方、パ・リーグは最終的にホークスが抜けたものの、CSがあったこともあり最後の最後まで上位争いは拮抗していた印象です。

それでは早速パ・リーグ6球団のレギュラーシーズンを振り返りましょう!

1位 ソフトバンクホークス

<2020シーズンチーム成績>
73勝42敗5分 勝率.635 打率.249 防御率2.92

開幕直後こそ不調でしたが、終わって見れば堂々リーグ優勝を果たしたソフトバンクホークス。
その強さは圧巻で、開幕時の不調は一体何だったんだろうと思わせるほどのものでした。

打撃は持ち前の選手層の厚さで得点を重ねた

ホークスは昨シーズンのオフにヤクルトスワローズからバレンティン選手を獲得しましたが、スワローズ在籍時のような活躍はできませんでした。
また、ベテランの松田 宣浩(まつだ のぶひろ)選手も決して本調子とは言えず。

さらに、デスパイネ、グラシアル両外国人助っ人選手の来日が新型コロナウイルスの影響で遅れるなど、開幕当初はベストなオーダーを組めませんでした

しかし、若手の栗原 陵矢(くりはら りょうや)選手や俊足の周東 佑京(しゅうとう うきょう)選手など豊富で厚い選手層を上手く活かしながら徐々に順位を上げ、イーグルスやマリーンズをあっという間に追い抜くと大型連勝も記録。

文字通り「勝ち癖」が付いている常勝軍団たる戦いぶりでした。

投手陣も層が厚い

今シーズン、ホークスはエースの千賀滉大投手が開幕に出遅れた上、本来の実力を発揮できず苦しい立ち上がりとなりました。
また、バンデンハーク投手も背中のハリなどの影響からわずか5試合の登板、防御率6.92と苦しみました。

しかし東浜 巨(ひがしはま なお)投手や、石川 柊太(いしかわ しゅうた)投手、ベテランの和田 毅投手はそれぞれ7以上の貯金をつくり、防御率も2点台と安定

8回のセットアッパーと9回を締めるクローザーはモイネロ投手と森 唯斗投手が抜群の安定感で文句のつけようがありませんでした。

終盤はもはや7回までにリードしていないと負けが確定するような雰囲気さえありました。

エースが多少崩れても他の先発投手や中継ぎ陣も層が厚く、チームとしての総合力を感じました。

日本シリーズも圧倒的な勝利

先日行われた、読売ジャイアンツとの日本シリーズでもホークスの強さは健在でした。

今シーズン、セ・リーグはCS開催なしという点や本拠地の東京ドームが使用できなかったこと、そして新型コロナウイルスの影響を考慮して全試合でDH制を導入するなど様々な影響があったのは間違いありません。

それにしてもジャイアンツは見せ場なく、ホークスの独壇場。

初戦でジャイアンツのエース菅野 智之投手から栗原選手が先制ホームランを放ち、その後も中押し、ダメ押し点を入れるなど勝ち試合のお手本のような試合をみせてくれました。

その後も第2戦は甲斐選手、グラシアル選手、デスパイネ選手のホームランが飛び出すなど強力打線がその力を遺憾なく発揮

第3戦、4戦はジャイアンツの投手陣も頑張りをみせましたが、ホークスの投手陣がジャイアンツの野手陣に本来の打撃をさせなかったことで勝利を掴みました。

昨年に続き、2年連続で4連勝したホークス。

パ・リーグを制すことが日本を制すことになりそうな印象を強く受けました。

2位 千葉ロッテマリーンズ

<2020シーズンチーム成績>
60勝57敗3分 勝率.513 打率.235 防御率3.81

バランスの取れたチーム編成でCS出場権利を獲得したマリーンズ。
他チームのようなチームの立役者にあたる選手は見当たりませんでしたが、総合力でこの順位を勝ち取った、という印象を受けました。

もちろん中村 奨吾選手や打線の中軸を担っていた井上 晴哉(いのうえ せいや)選手などチームを引っ張ったと言える選手はいます。
しかし両選手の打率は.250を下回っており、残念ながら立役者やキーマンと呼べるような成績ではありませんでした。

新型コロナに見舞われ非常事態に

チーム全員で頑張っていたマリーンズを新型コロナウイルスが襲いました。

10月4日に、それまで5勝を挙げていた岩下 大輝(いわした だいき)選手がPCR検査で陽性に。
また、その後の選手と球団スタッフに対する検査でもベテランの鳥谷 敬(とりたに たかし)選手や荻野 貴司(おぎの たかし)選手など13名の感染が発覚し、1軍の2軍の大量入れ替えを余儀なくされました。
そのため、戦力が一時大幅にダウンしてしまいました。

その後、感染した選手も無事戻ってきましたが、抹消前のチームの勢いは戻って来ませんでした。

その証拠に、選手の大量入れ替えの前日である10月5日時点では12あった貯金が11月4日には貯金1にまで減ってしまい、チーム順位も一時3位に転落してしまいました。

それでも最後はライオンズ、イーグルスの追撃を抑えて2位でフィニッシュ。
CSではホークスに敗れたものの最後までCS争いを繰り広げて勝ち残った粘り強さには脱帽です。

チャンスを掴んだ2年目・藤原 恭大

新型コロナウイルスの影響はチームにとって痛手となりましたが、それをチャンスに変えた選手もいました。
名門・大阪桐蔭高校からドラフト1位でマリーンズに入団した藤原 恭大(ふじわら きょうた)選手です。

1軍昇格後すぐにスタメンで起用されると、井口監督の期待に応える3安打。その後も藤原選手のバットは快音を響かせました。
CSでも勝負強いバッティングを見せ、来シーズンのレギュラー獲得へ大きく前進したと思われます。

3位 西武ライオンズ

<2020シーズンチーム成績>
58勝58敗4分 勝率.500 打率.238 防御率4.28

夏場は5位と苦しむも最終的には3位とAクラスでフィニッシュしたライオンズ。
しかし、ここ2年リーグ優勝していたことを考えるとファンにとっては物足りないシーズンとなってしまったのではないでしょうか。

不調の波に飲まれた打撃陣

リーグ優勝を果たした2年間のライオンズは強力打線が持ち味のチームでした。

しかし、今シーズンは打線の要である山川 穂高選手が絶不調
ホームランこそ放つものの、打率は2割を超えるのがやっとと苦しみました。
あまりの不振から4番を外れた試合もあるなど、本人にとってもチームにとっても痛い状況。
また、山川選手以外にも森 友哉選手、外崎 修汰選手も本来の実力を発揮出来なかった印象です。

8月中旬にはチーム打率がリーグ最下位に沈むなど、チームとしても主力の不振をカバーすることができず。

源田選手や金子選手などが主力の不調をカバーできるようなバッティングができれば、もう少し良い結果を望めたかもしれません。

頑張った中継ぎ投手陣

打撃陣はピリッとしなかったライオンズですが、中継ぎ投手陣は素晴らしい活躍をみせてくれました。

特に平良 海馬(たいら かいま)投手と増田 達至(ますだ たつし)投手がシーズンを通して安定してました。

今シーズンは多くのチームが抑え投手に苦しむ中、ライオンズだけは開幕から増田投手が安定していた、というのはチームにとって大きなプラス要素のひとつでした。

ただ、先発投手陣を見てみると、規定投球回に達したのが高橋 光成(たかはし こうな)投手1名のみ。
先発投手も苦しんだことがわかります。

事実、昨年12勝1敗と素晴らしい活躍をみせてくれたニール投手は6勝8敗と負け越し。
4年目の今井 達也投手や2年目の松本 航(まつもと わたる)投手も負け越すなど、若手ピッチャーもパッとせず。
先発投手陣は不安定でした。

明るい材料としては先月行われたドラフトで社会人の佐々木 健(ささき たける)投手を2位で獲得。
来シーズンの即戦力候補として期待したいところです。

4位 楽天イーグルス

<2020シーズンチーム成績>
55勝57敗8分 勝率.491 打率.258 防御率4.19

オフシーズンでの補強と開幕ダッシュにも成功し、今年は優勝候補か、とまで思われた我らがイーグルス。
しかし前半の勢いも虚しく、シーズン終盤に大失速してBクラスに終わりました。

リーグトップの打率と得点力を誇った打撃陣

今シーズンのイーグルスは浅村選手や、マリーンズから移籍してきた鈴木 大地選手などの活躍により557得点、チーム打率.258はいずれもリーグトップと他チームの投手陣にとって驚異となりました。

特に浅村選手はホームラン王に輝くなど、打線の中心選手として活躍。
また、鈴木大地選手も打率.295で自身キャリアハイをマーク。

一方、機動力を上手く使えなかったため、せっかくランナーが出ても次の塁に進めない、という試合が目立ちました。

事実、今シーズンの盗塁数67はリーグ最少の記録。

俊足が持ち味の田中 和基選手や辰巳 涼介選手などがいたものの、出場試合数が少なかったり、出塁率が伸び悩んだ結果、ルーキーの小深田選手がチームトップの盗塁数をマークする結果となりました。

苦しんだ投手陣

打撃面での好成績を残せた反面、投手陣が苦しみました。

先発投手陣ではエース則本投手が5勝7敗と負け越し
エースの不調をカバーするかのように岸 孝之投手、涌井 秀章投手の両ベテラン投手が貯金をつくるも力及ばず。

中継ぎ投手陣もメジャー帰りの牧田 和久投手とブセニッツ投手が安定して活躍していましたが、守護神として開幕をスタートした森原投手の離脱など厳しい状況が続きました。

イーグルスのシーズン総括はチーム編投手編野手編の3つに分けて詳しく書いていますので、興味のある方はこれらの記事もご覧ください。

5位 日本ハムファイターズ

<2020シーズンチーム成績>
53勝62敗5分 勝率.461 打率.249 防御率4.02

去年に続き今年もAクラス入りできなかったファイターズ。
チーム打率とチーム防御率を考えると、投手の戦力が不足していたように感じます。

選手層が薄かった先発投手陣

今シーズンのファイターズでは、主に8名の投手が先発登板しました。

・有原 航平投手 8勝9敗 防御率3.46
・上沢 直之投手 8勝6敗 防御率3.06
・杉浦 稔大(すぎうら としひろ)投手 7勝5敗 防御率3.13
・ドリュー・バーヘイゲン投手 8勝6敗 防御率3.22
・加藤 貴之(かとう たかゆき)投手 4勝2敗 防御率3.26
・河野 竜生(かわの りゅうせい)投手 3勝5敗 防御率5.07
・金子 弌大(かねこ ちひろ)投手 1勝3敗 防御率5.11
・ニック・マルティネス投手 2勝7敗 防御率4.62

勝敗数で貯金を作っている投手は何名かいるものの、どの投手の防御率も3点台以上と、防御率2点台すら1名もいない結果となりました。
また規定投球回に達したのは有原投手のみ

こうしたデータから先発投手陣が役割を果たせなかったことがうかがえます。

もう一つ注目すべきは若手投手がこの中に1名しかいない、という点です。
若手の中で一番先発登板回数が多いのが河野投手。その次が、登板回数5回の吉田 輝星(よしだ こうせい)投手。

今シーズンは現状のメンバーでなんとか先発のコマ数を用意することが出来ましたが、このままでは来シーズン以降の先発投手陣の編成に不安が残ります。

目立ったエラー

今シーズンのファイターズはエラーが多かった点も見逃せません。
ファイターズのチームエラー数69はリーグワーストの記録。
特に若手のミスが目立った印象で、清宮選手、平沼選手そして清水選手のエラー数が多かった印象です。

来シーズン以降に向けては若手先発投手と守備力強化が課題となりそうです。

6位 オリックス・バファローズ

<2020シーズンチーム成績>
45勝68敗7分 勝率.398 打率.247 防御率3.97

最下位となってしまったバファローズは序盤から出鼻をくじかれてしまい、その後も浮上することができませんでした。

開幕カードの対イーグルス戦では1勝2敗と負け越し
その後マリーンズにも6タテを食らうなど勝ちが遠かった印象です。

枚数不足だった先発投手

今シーズンのバファローズは山本 由伸投手が一人頑張っていたという印象を受けます。
しかし、その山本投手もなかなか打線の援護に恵まれず、8勝止まり。
山本投手の実力を考えれば二桁勝利はして欲しいところ、あと一歩という結果になりました。

さらに山本投手に続く先発投手が不足。
3年目の田嶋 大樹(たじま だいき)投手や開幕投手を務めた山岡 泰輔投手が主な先発投手として登板しましたが、田嶋投手は4勝6敗、山岡投手も4勝5敗といずれも負け越し。
またアルバース投手、山崎 福也(やまさき さちや)投手も貯金が作れませんでした。

先発ローテーションを守っていた投手で、貯金を作れた投手が山本投手のみでは、チームが浮上できないのも無理はありません。

打線も恐怖感がなかった

チーム打率こそリーグ4位でしたが、打線全体でバファローズを見たときに恐怖感がなかった印象です。

それもそのはず、主軸の吉田 正尚選手以外に安定した成績を残した選手がいないからです。

吉田 正尚選手は打率.350と驚異的な打率で首位打者を獲得。また打点、安打数でもチームトップの成績を残しました。

一方、その他の選手をみると安達 了一選手が打率.289とまずまずの成績を残したくらいで、打線としてみたときの恐怖感が薄かった印象。

投打のキーマンがいるだけに、チーム全体としてのレベルアップが求められることになるでしょう。

選手層が明暗を分けたパ・リーグ

パ・リーグ6チームの2020年レギュラーシーズンの振り返りをしました。

今シーズンは新型コロナウイルスの影響で異例のシーズンとなった点は12球団共通です。
そういった意味で最後に実力の差が見えたのは選手層の厚さではないかと考えています。

主力選手の不振やケガなどによる離脱があった時、普通のチームであれば苦しみます。
我らがイーグルスもそうですし、最後までCS争いが激しくなったのも頷けます。

しかし、こうした状況をしり目にホークスだけが最終的には独走。
主力選手が出場できなくても、代わりに出場した選手が軒並み活躍する選手層の厚さです。

日本シリーズも圧倒して、もはや国内には敵なしかと思わせる黄金時代に突入しています。

これほど強いチームとシーズンを戦っていたのかと、他の5チームは改めて感じたのではないでしょうか。

来シーズンも打倒ホークスに向けて5球団は躍起になるでしょう。
追われる側のホークスも隙を見せる気配はありません。

来シーズンも熱い戦いを繰り広げそうなパ・リーグ。

そしてパ・リーグを制したチームが日本一になりそうな予感だけは強くします。

来シーズンのパ・リーグも非常に楽しみです!

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