少し気が早いけど今年の新人王候補について考えてみた

最優秀新人賞

それは数あるプロ野球のタイトルの中でも1回しか受賞できないとても貴重なタイトル
また、今後の日本プロ野球を代表する選手になる可能性を大いに秘めた選手が受賞することが多いのも新人王の特徴です。

異例の3ヶ月遅れで開幕した2020年シーズンも9月後半になり、両リーグのペナントレースも佳境に入りつつありますね。
とはいえ、まだ残り試合は40試合前後残っています。

そこで今回は前半戦の成績を踏まえた上で、「いちプロ野球ファン」目線からセ・パ両リーグの新人王争いについて考えていきたいと思います。

新人王ってどんな選手が受賞できるの?

そもそも新人王の資格はどのような選手に与えられるのでしょうか?
以前に公開したプロ野球のタイトル賞に関する記事で新人王についてまとめました。
新人王についてもっと詳しく知りたいという方はこちらの記事をご覧ください。

新人王の資格は以下の条件を満たしている選手です。

1.支配下選手に初めて登録されてから5年以内である
2.海外のプロ野球リーグへの参加経験がない
3.前年までの1軍登板回数が30回以内である(投手)
4.前年までの1軍での打席数が60打席以内である(打者)

今シーズン、上記の条件を満たす選手はセ・パ両リーグあわせて127名います。
その中から投票権をもつ記者の投票により賞にふさわしい選手が各1名ずつ決定します。
ただし、受賞に値する選手がいないと判断された場合は該当者なしという場合もあります。

あくまでも記者による投票のためファンの意見が直接反映されるわけではないのが残念ですが、毎年納得できる選手が選出されているようには感じます。

セ・パ両リーグの歴代新人王受賞者

では、まず過去の新人王受賞者からどのような選手が選出される傾向があるのか分析しましょう。

新人王・歴代受賞者

各リーグの直近10年間の受賞者は以下の通りです。

セ・リーグ
選手名チーム名打率/防御率主な成績
2019村上 宗隆選手ヤクルト打率.23136本塁打
2018東 克樹投手DeNA防御率2.4511勝5敗
2017京田 陽太選手中日打率.2644本塁打23盗塁
2016高山 俊選手阪神打率.2758本塁打136安打
2015山崎 康晃投手DeNA防御率1.922勝4敗37S
2014大瀬良 大地投手広島防御率4.0510勝8敗
2013小川 泰弘投手ヤクルト防御率2.9316勝4敗
2012野村 祐輔投手広島防御率1.989勝11敗
2011沢村 拓一投手巨人(現ロッテ)防御率2.0311勝11敗
2010長野 久義選手巨人(現広島)打率.28819本塁打
パ・リーグ
選手名チーム名打率/防御率主な成績
2019高橋 礼投手ソフトバンク防御率3.3412勝6敗
2018田中 和基選手楽天打率.26518本塁打
2017源田 壮亮選手西武打率.2703本塁打
2016高梨 裕稔投手日本ハム(現ヤクルト)防御率2.3810勝2敗
2015有原 航平投手日本ハム防御率4.798勝6敗
2014石川 歩投手ロッテ防御率3.4310勝8敗
2013則本 昂大投手楽天防御率3.3415勝8敗
2012益田 直也投手ロッテ防御率1.672勝2敗43HP
2011牧田 和久投手西武(現楽天)防御率2.615勝7敗22S
2010榊原 諒投手日ハム(2015年引退)防御率2.6310勝1敗

こうして見ると野手よりも投手の方が多く選出されている傾向にあります。
実際、セ・パ両リーグの過去10年間の受賞者全20名のうち、投手は14名。

さらにパ・リーグに限って言えば、野手は2017年の源田壮亮選手(ライオンズ)と2018年の田中和基選手(イーグルス)の2名だけ。
つまり新人王の傾向の1つとして「投手>野手」と言える傾向にあります。

また、成績に注目して見ると投手なら二桁勝利、野手なら打率.265前後が受賞の目安成績と言えます。
新人王といえど、プロである以上はいかに試合に出場して結果を残すかが重要になってきます。
したがって、成績も新人王選出の重要な条件の1つと言えるでしょう。

新人王の選出方法

また別のポイントとしては、新人王の選出方法にあります。
本塁打王や最多勝利投手賞、最多打点賞などは「記録」という動かぬ証拠がありますので誰が見ても分かります。

一方、前述の通り新人王は記者による投票で受賞者が決定します。

つまり成績は投票の1判断材料にすぎないのです。
投票による選出では記者一人ひとりの意見、選手に対する印象といった目に見えない抽象的な要素も含まれるため、その選手が重要な試合で活躍したかという要素も判断材料になってくると言えるでしょう。

例えば、2019年の新人王争い。
この年、新人王を受賞した村上宗隆選手(スワローズ)は、高卒2年目ながら持ち前の長打力を存分に発揮し、36本ものホームランを放ちました。

一方、村上選手と並んで新人王の有力候補だったのが近本光司選手(タイガース)。
近本選手は、昨シーズン打率.271で、159本ものヒットを放ち、それまで長嶋茂雄氏が保持していたセ・リーグの新人記録である153本の記録を半世紀以上振りに塗り替えました
さらに近本選手は走塁面でも強さをみせ、盗塁数は36。
球団として2008年の赤星憲広氏以来の盗塁王のタイトルも獲得しました。

村上選手はチームの攻撃の要となる強打の選手、近本選手は走力を武器にした攻撃が売りの選手というように、2選手は同じ野手でありながらも持ち味・長所が異なるため、どちらを選ぶのかは投票権を持った記者の好みの問題とも言える状況でした。

そして投票の結果、村上選手が近本選手に39票差をつけて新人王を受賞しました。
個人的には近本選手の方が総合的に優れていると感じましたが、やはり派手さのあるホームラン、36本塁打という成績のインパクトが大きかったのだと思います。

今年の受賞候補はどんな選手がいる?

では以上を判断材料として今年の新人王有力候補をピックアップしてみたいと思います。

今年の新人王候補にはどのような選手が名前を連ねているのでしょうか?

ここでは、セ・パ両リーグ4名ずつ名前を挙げたいと思います。
※掲載する今シーズンの成績は全て2020年9月20日終了時点

セ・リーグの2020新人王候補

まずはセ・リーグから紹介します。

森下 暢仁投手(カープ)

まず1人目の新人王候補は昨年、明治大学からドラフト1位で広島カープに入団したルーキー森下暢仁(もりした まさと)投手

森下投手は7月にコンディション調整のため2軍に降格となったものの、今シーズン12試合に登板し、6勝2敗・勝率.750・1完封・防御率2.40という素晴らしい成績を残しています。

8月にはルーキーながら無四球完封勝利をするなど、評判どおりの実力を遺憾なく発揮しています。
ただ、登板した試合の大半で投球数が100球以上となっており、スタミナ面で終盤に悪影響を及ぼさないかが懸念されます。

順調に勝ち星を積み重ねれば二桁勝利に近い数字は見えてくるだけに可能性は高いのではないでしょうか。

戸郷 翔征投手(ジャイアンツ)

2人目の新人王候補はジャイアンツに2018年ドラフト6位で入団し、今年高卒2年目となる戸郷 翔征(とごう しょうせい)投手

戸郷投手は昨シーズンの終盤にプロ初登板を経験し、日本シリーズでも登板するなど期待の若手投手。

今シーズンは開幕から先発ローテーションの一角として、これまで12試合に登板して7勝4敗・勝率.636・防御率2.97とこちらも素晴らしい成績をマークしています。

また、球団として桑田 真澄氏以来となる開幕3連勝を記録し、開幕から新人王を期待させるような成績を残しました。
さらに、8月も4戦4勝と素晴らしい成績を残しています。
懸念点としてはまだ身体の線が細く、体力面に少し不安が残る点ではないでしょうか。

シーズン終盤まで好成績を残し続ければ十分に新人王獲得の可能性も見えてくるでしょう。

大江 竜聖投手(ジャイアンツ)

大江 竜聖(おおえ りゅうせい)投手は二松学舎大付高校から2016年ドラフト6位でジャイアンツに入団した高卒4年目の投手。
二松学舎大付属高校時代には甲子園のマウンドも経験。
今シーズンは開幕1軍の座こそ逃したものの、7月下旬に1軍に上がると中継ぎとして26試合に登板・防御率2.70・9HPという成績をマークしています。

もともと先発としてプロ入りしましたが、1軍では中継ぎが多くなり、更に今シーズンから左のサイドスローに転向した努力を積み重ねている大江投手。
奇しくもシーズン途中には我らが楽天イーグルスから同じく変則的な左のサイドスロー高梨雄平投手もジャイアンツへ移籍したことで更なるパワーアップが期待されています。

試合の中盤・終盤のおける「火消し役」として活躍しています。

清水 昇投手(スワローズ)

清水 昇(しみず のぼる)投手は2018年ドラフト1位でスワローズに入団した投手。
主にリリーフとして今シーズンは開幕から11試合連続で無失点ピッチングをするなど活躍中です。
ここまで34試合に登板・20ホールド・防御率2.50・39奪三振とこちらも安定した成績を残しています。

セ・リーグ新人王予想は森下 暢仁投手

前述の通り「いちプロ野球ファン」の見解ではありますが、セ・リーグの新人王は森下暢仁投手と予想したいと思います。

大江投手、清水投手も中継ぎとして活躍をしていますが、直近10年で新人王の受賞した投手は先発投手が大半であることを考えると、大江投手、清水投手よりも森下投手、戸郷投手の方が有力と考えられます。

中でも森下投手の方が毎回安定したピッチングをしている印象があるので、森下投手がわずかに一歩リードと考えています。

また今シーズンのセ・リーグは恐らく巨人がこのまま優勝する可能性が高いことを考えると、記者による投票では「感情」も含まれるため優勝チーム以外のチームから選出される可能性が高いのではと考えました。

パ・リーグの2020新人王候補

続いてパ・リーグ。セ・リーグとは対照的に今年のパ・リーグは好打者揃いです。

小深田 大翔選手

まず1人目の新人王候補は我らがイーグルスの小深田大翔(こぶかた ひろと)選手ではないでしょうか。

即戦力として入団した小深田選手ですが、実際にその期待に応える活躍をしています。
もともと守備と走塁はレギュラークラスの評判。
開幕当初は打撃面に不安があり打率は1割台と低迷していました。「守備と走塁の人」という印象が強かったものの出場を重ねるごとに打撃成績も向上。
ここまで71試合に出場して打率.272・出塁率.344・12盗塁という成績を残しています。

ただでさえ層が厚いイーグルスの内野陣において、ここまで9割近くの試合に出場しており、残り試合での活躍にも期待です。

一方、守備が持ち味ではあるものの4失策と少し守備に課題がある部分もあります。
もともとの守備力はピカイチですが、経験したことのない様々な球場でのプレーや足の速い走者への対応などで新人らしさが出ている印象です。

終盤に向けて守備を安定させ、コンスタントに出塁を続ければ打率・盗塁の数字は上がってくる期待が持てます。

安田 尚憲選手(マリーンズ)

続いて2人目の新人王候補はマリーンズの安田 尚憲(やすだ ひさのり)選手

名門履正社高校から2017年ドラフト1位で入団した期待の大砲である安田選手は今シーズン72試合に出場。チームの中心選手として活躍しています。
また、今シーズンは途中から4番で出場するなど、首脳陣からの期待も伺えます。

ここまで打率.231と揮わないものの、打点39は今年のパ・リーグの新人王有資格者の中でも群を抜いてダントツトップです。

勝負強い得点力、長打力でどこまで打点や本塁打を伸ばせるかがポイントになりそうです。

平良 海馬投手(ライオンズ)

3人目の新人王候補はライオンズの平良 海馬(たいら かいま)投手です。

2017年ドラフト4位で入団した平良投手は昨シーズンにプロ初登板を果たすと、勝ちパターンのリリーフ投手として活躍しました。
今シーズンも33試合に登板・16ホールド・防御率2.27と安定しています。

力のあるストレートは160km/hを計測することもあり、近年外国人投手が活躍する剛腕リリーフの中で活躍の期待ができる投手です。

和田 康士朗選手(マリーンズ)

最後に4人目の新人王候補はマリーンズの和田 康士朗(わだ こうしろう)選手

俊足が持ち味の選手で18盗塁をマーク。新人王有資格者の中でダントツのトップ。
単に足が速いだけでなく、ディレードスチールを成功させるなど走塁の上手さも光ります。

ただしスタメンでの出場数が少ないため、他の選手に比べるとやや印象が薄いようには感じます。

パ・リーグ新人王予想は小深田 大翔選手

4選手ともポジションや持ち味が異なり、甲乙つけがたいところです。

ただ出場試合数やここまでの成績を踏まえると、パ・リーグの新人王は小深田大翔選手と予想します。

もちろん我らが楽天イーグルスの選手だという個人的な感情もありますが、正直なところ安田選手とほぼ互角な印象です。
2019年の新人王争いを例で挙げたように「小技」の選手より「大砲」の方がインパクトが大きいため票が集まりやすい傾向にはあると思います。また安田選手といえば履正社高校時代から非常に注目されていましたので、知名度で言えば安田選手が上と言えます。

とはいえ、総合的な出場機会、成績、パフォーマンスをみると僅差で小深田選手がリードしている印象です。

楽天イーグルスの野手としては田中和基選手が唯一の新人王を獲得していますので、ぜひ続いてほしいものです。

残りのシーズンは新人王候補の活躍から目が離せない

今年のレギュラーシーズンの試合数も残り40試合前後。

現時点でセ・リーグは戸郷投手と森下投手の2名が頭1つ抜き出ている印象ですが、残り試合での2選手の成績、またその他の有資格選手の活躍次第では勢力図に変化が現れるかもしれません。

もちろん同じことはパ・リーグにも言えます。
現在は小深田選手がわずかに優勢の印象。
イーグルスファンとしては残り試合での小深田選手の活躍を期待し、投票権を持つ記者たちにいい印象を植え付けたいものです。
しかしチーム状況からするとパ・リーグはロッテに勢いがあります。
チームの勢いに乗ってインパクトの大きい活躍をすれば知名度で勝る安田選手にも可能性があります。

いずれにしても今年の新人王が決定するのはシーズン終了後。
新人王争いはもちろん、投手で言えば最多勝、野手で言えば本塁打王、打点王など個人成績にも注目が集まってくる時期です。

セ・リーグは余程のことがない限り巨人の優勝が濃厚ですが、パ・リーグは優勝争い、そしてクライマックスシリーズ争いも目が離せません。

チームにも選手にも目が離せない試合が続いていきますね!

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