雨天中止・雨天コールドの判断は球団?審判団?判断基準や試合成立条件と誤解への警報

昨日2020年9月10日(木)に楽天生命パーク宮城で行われた東北楽天ゴールデンイーグルス対福岡ソフトバンクホークス15回戦は2-9でホークスが勝利しました。

ここで大きな話題となったのが天候と試合時間
この日の仙台市内は雨が降ったりやんだりの不安定な天候に見舞われ、試合中には強い雨と風が吹き荒れるシーンも。

結果として1回裏と7回裏の二度にわたって試合が中断。終わってみれば18時にプレイボールした試合の終了時刻は23時38分となり、あわや日付を跨ぐ可能性がありました。
合計1時間32分にわたる中断はパ・リーグ史上8番目の長さで、1970年以降では同リーグ最長記録となりました。

前述の通り不安定な天候によって一時は物凄く雨が強くなり、視界が悪くグラウンドコンディションも悪化しました。
こうした状況で多くの人の頭に浮かぶのは雨天コールドの判断

結果的に昨日の試合は二度目の中断以降は天候が落ち着いたこともあり、最終回まで試合は実施されました。

SNSでも様々な議論はありましたが、中でも「雨天コールドの判断は誰がするのか?」といった疑問や「楽天の本拠地だから自チームに有利な判断をしているのではないか?」といった誤解も数多く見られました。

そこで今回は雨天中止や雨天コールドの判断は誰がするのか?球団?審判?
その答えや判断基準などを深掘りしていきたいと思います。

試合前の判断は球団・開始後の判断は審判団

まず結論から申し上げますと下記の通りです。

試合開始前の雨天中止判断は主催者(ホームチーム)
試合開始後の雨天中止判断は審判団

試合が始まる前の段階では主催者、つまりホームチームの球団が判断します。
試合を開催すると判断して両監督がメンバー表を交換した時点で試合開始とみなされ、試合開始後は審判団の判断となります。(審判団で判断を協議して責任審判が最終決定。)

この点を誤解している、あるいは知らない方もいらっしゃると思いますので、この機会に覚えてみてください。

つまり昨日の試合で言えば既に試合は始まっていましたので、二度にわたる中断は審判団が判断したと言えます。
必然的にホームチームの球団(この場合は楽天イーグルス)が試合展開に応じて有利になるように、といった判断は一切ないことがわかります。

シーズン中に変更あり

基本的に試合開始前の判断は主催者、試合開始後は審判団の判断となりますが、補足として2点紹介します。

まず1点目は上記ルールはシーズン中に変更があるという点です。

具体的には、シーズンが終盤に差し掛かるとポストシーズン(クライマックスシリーズ)や日本シリーズの日程が迫ってきます。
特に日本一を決める日本シリーズは各リーグの代表チームが対戦するため、各リーグのペナントレース及びポストシーズンの日程が全て消化していることが絶対条件となります。

要するに、余程のことが無い限り簡単には調整できないというわけです。

そのため、シーズン終盤になると試合開始前の雨天中止判断等も主催者からNPBに管轄が変更されます
具体的な日程で言うと、NPBの日程カレンダーの第4クール第20節以降(2019シーズンの場合は8月27日以降)の日程は「連盟管理節」と呼ばれるようになり、試合をするかどうかの判断はすべてNPBが行うと定められているそうです。

2020シーズン特例

今シーズンはご存知の通り新型コロナウイルスの影響により様々な特例が定められています。

その一環として雨天中止判断など試合をするかどうかの判断、先ほど書いた「連盟管理節」が全日程において適用されています。

つまり2020シーズンに関しては全試合において試合開始前の判断はNPBとなっています。
主催者側は天気予報などの情報提供に協力はしているのかもしれませんが、いずれにしても自チームが有利になるように、といった工作は一切できないということになります。

ただでさえ試合数が短縮されたシーズンなので妥当な措置と言えますね。

※上記2点は公開時に記載が無かったため公開後に追加しました。

試合成立の条件

試合開始後の雨天中止・雨天コールドの判断は審判団が行なうことが分かりました。

次に試合が成立する条件をおさらいしておきましょう。
試合成立とは、その日の試合が行われたことを公式に記録するかどうかということ。
天候不良やアクシデントが無い限り、通常は9回もしくは延長の試合終了まで行なわれますが、今回のような雨天などで試合の続行が危ぶまれる場合に規程が設けられてます。

試合の成立条件は下記の通りです。

・5回裏まで完了している場合
・5回表完了後、後攻が勝っている場合
・5回裏の攻撃中にホームチームが得点して、相手チームの得点と等しくなった場合

これら3つの条件のいずれかに該当した状況で、最終回を待たず責任審判が試合の打ち切りを命じた場合、雨天コールドゲームとなり、試合は成立となります。
いずれも【5回】がポイントになっていることが分かりますね。

逆に言えば4回までに責任審判が試合の打ち切りを命じた場合、試合は不成立、「雨天ノーゲーム」となります。
雨天によるノーゲームとなった場合、それまでのあらゆる記録は「無」になります。

昨日の試合で言えば2回裏に岩見雅紀選手がプロ初安打にしてプロ初ホームランを放ちました。
もしノーゲームとなれば、この記録も幻、無かったことになってしまうところでした。


雨天中止の判断基準(試合前)

では実際に雨天中止をどのような判断基準で決めているのかを考えていきます。
もちろん全てが事実ではなく一部推測となる要素はありますが、おおよそ間違ってはないと考えています。

まずは試合開始前。
これは前述の通り判断は主催者、つまりホームチームに委ねられます。

天気予報・雨雲レーダー

当然ですが、まずは何と言っても天気予報や雨雲レーダーといった気象情報から判断するのは間違いないでしょう。
楽天生命パークのような屋根がない屋外球場はもちろんですが、ドーム球場であっても台風接近など悪天候が見込まれ、来場者の安全が確保できない場合などは中止となることもあります。

こうした気象情報は各球団が民間の気象予報会社と契約して入手していると言われてます。
近年、気象情報の精度は着実に上がっています。
試合が行われる時間の中でどのくらいの雨が降るのか、あるいはどういった天候になるのか、かなり高い精度で分析・判断できるようになったのではないでしょうか。

いわゆるゲリラ豪雨のような不安定な天候であっても雨雲レーダーの予測を分析することで判断することもできるでしょう。

何と言っても天気予報や雨雲レーダーなどの気象情報が大きな判断材料になっていると言えます。

チーム状況・成績

試合開始前はホームチーム(球団)の判断である以上、チーム事情を考慮することも十分にあり得る要素です。

例えばチームの調子が良いから何としても試合をしたい場合には多少の悪天候でも試合開催を判断する可能性もあり得ると考えられます。
あるいは選手個人やチームとしての成績がかかっているために試合をしたい、という判断も考えられます。

もちろん試合開始後は審判団の判断となるので結果的に中止になる可能性もありますし、むしろ厳しい試合展開になって敗れる可能性も十分あり得ます。

そう自分たちの都合よく進むとは限りませんが、試合開始前であれば自チームにとって有利になる可能性を判断基準にする可能性はあり得ると言えます。

試合日程

例えば連戦が続いて選手の疲労が蓄積している場合、降水量がそこまで多くなくとも天候が悪い可能性が高いのであれば無理せず中止にする、という判断はあり得るでしょう。

逆にシーズン終盤になればなるほど試合日程に余裕は無くなっていきます。
特にクライマックスシリーズや日本シリーズの日程はずらせない試合。

試合日程を考慮して何としてでも試合をしなければならない、ということもあり得るでしょう。

雨天中止の判断基準(試合中)

では試合が始まってからの審判団による判断基準はどのような要素が考えられるでしょうか。

天気予報・雨雲レーダー

ホームチーム(球団)の判断と同様、当然ですが天気予報や雨雲レーダーなどの気象情報が最優先となるのは容易に想像できます。

一時的に天候が悪化しても、その後に回復する可能性が高いという情報があれば一時中断の判断を下し、天候が回復したら再開という判断ができます。

まさに昨日の試合は二度の中断を挟みながら「悪天候が長時間続くものでは無い」という判断から最終回まで続行したと推測されます。

天候はコントロールできるものではありませんが、昨日の試合で仮に上記が判断基準だったとすれば、その通りになったと言えます。気象情報の精度の高さがうかがえたとも言えそうです。

グラウンドキーパー

気象情報を考慮したうえで、実際に選手たちがプレーするグラウンドコンディションは重要な判断基準となるでしょう。

いくら天候が回復してもグラウンドコンディションが回復しなければ選手にとって危険な状態となります。

実際にグラウンドを整備するグラウンドキーパーと協議をして、どういった整備が必要か、あるいはどのくらい整備に時間が掛かるかなどの情報を得て判断すると考えられます。
天候が回復しても整備に時間が掛かるなら、再開判断する時間を決める必要があります。
逆に天候回復が見込めず、グラウンド整備をしてもプレーするのに支障が出ると判断されれば打ち切りの判断をするでしょう。

グラウンドのことは普段から入念に手入れしているグラウンドキーパー、つまりグラウンド整備のプロに聞くのが重要な判断基準になるでしょう。

試合日程

審判団にとっての試合日程とは、ずばり短期決戦と言えます。

つまりクライマックスシリーズや日本シリーズといった日程が決まっている短期決戦の場合、基本的には試合を成立させたい、続行させたいという判断になる可能性が高いと考えられます。
もちろん明確な判断基準は分かりませんが、多くのファンも知る代表的な事例がありました。

2017年10月に阪神甲子園球場で開催されたクライマックスシリーズ・ファーストステージ第2戦。
ご存知の通りクライマックスシリーズは超短期決戦。中でもファーストステージはその後にセカンドステージや日本シリーズも控えることから、そう簡単に日程は変えられません。

この日は雨が降り続いており、いつ試合が終わっても不思議ではない状況。
実際にプレーした選手や首脳陣からも「経験がない」という声が多く上がりましたが、結局9回まで試合が行われました。
現在メジャーリーグでプレーする元DeNAベイスターズ筒香選手が打席で転倒しユニフォームが泥だらけになってしまったシーンが全てを物語っていました。

この「強行」とも言える試合開催に関して、セ・リーグ統括の杵渕 和秀氏は下記のように説明したそうです。

CSという試合の性質もあって判断した。できるだけ試合を行うのが基本。DeNAさんから「やってくれ!」という話があったわけではない。シーズンの1試合と中止の重みが違うので決行した

判断の是非はともかく、短期決戦による試合日程が雨天コールドあるいは続行の判断基準となり得ることが分かりました。

誤解を広めたプロ野球解説者

さて、話を昨日の試合に戻してみましょう。
前述の通り、昨日の楽天生命パークは終始不安定な天候で雨が降ったりやんだり。
一時は豪雨に見舞われ、二度の中断を経て最終回まで行なわれました。

楽天生命パークは屋外球場のため、天候の影響を受けることは日常茶飯事とも言えます。

こうした背景から問題になっているのが「楽天は天候と試合展開次第で自チームに有利になるように操作している」という誤解です。

冒頭でも記載した通り、試合開始後の判断は審判団であり、ホームチーム(自チーム)は一切関係ありません

上記の問題提起は全くの事実誤認であり、誤った認識、誤解であることは明確です。

それでもこうした話題が上がるのはプロ野球解説者・里崎智也氏に原因があると言えます。
里崎智也氏はYouTubeチャンネルを運営しており、プロ野球に関して多くの動画をアップして発信しています。
その中で、ある試合に対して「楽天のグラウンド整備はおかしい。自チームに有利になるように行なっている」といった趣旨の発言をしました。
楽天イーグルスを「みっともない球団」とまで言い放ちました。

あまりにも無責任で、なおかつ事実無根、なにより関係者に対する侮辱ともとれる発言。
当然SNSを中心に物議をかもし、後に謝罪動画をアップ。
当該動画と謝罪動画のどちらも現在は削除されています。

ただ、謝罪動画の後に元NPB審判へ取材を行ない、試合中の雨天コールド、続行の判断に関して見解を伺ったそうです。
現在はその動画だけが残っています。

Satozaki Channelより

結果として自身の発言を撤回して謝罪はしています。

私は、この件に関してはこれで一件落着と言っていいと思っています。
しかし、里崎智也氏の発言は影響力があります。

つまり多くのプロ野球ファンに誤解を与えたことは間違いありません。
また、後に撤回したことや元NPB審判に取材した内容の動画をアップして「罪滅ぼし」をした行動は評価したいですが、全ての人が見ている訳ではありません。

結局「楽天は自分たちに有利なグラウンド整備をしている」という誤解が独り歩きしている可能性は否定できません。

ただでさえプロ野球の現場を長年経験し、今なお発信力・影響力のある人が言うのであれば「そうなんだ」と勘違いする人が発生して当然と言えます。

試合後も球団が判断するという誤解

事の発端となった問題の動画で、里崎氏は試合中も球団の判断が試合の続行あるいは雨天コールドに関係しているとの発言がありました。

この点は「試合後の判断は審判団が行なう」ことが分かっていればあり得ないことです。

しかし結果的に里崎氏も誤解していたことになり、その誤解が広がってしまったことは否定できません。

グラウンドキーパーへの誤解

似たような誤解で、グラウンドキーパーはホームチームの担当であることからホームチームに有利になるよう審判団に促すのでは、という誤解もありました。

そもそもグラウンドキーパーはグラウンド整備が仕事であり、試合が成立して無事に終わることが最大の使命です。
試合結果は一切関係なく、またそこに関与することもあり得ないでしょう。

こうした陰謀論みちた話を勢いに任せて「プロ野球解説者」の肩書きで仕事をする人が言って欲しくは無いものです。

悪質な投稿は罰せられるべき

もちろん里崎氏だけが悪いというわけではありませんが、誤解のきっかけを作ってしまったのは間違いないでしょう。

とはいえ、しっかりと謝罪され、自ら行動して取材をした結果も発信している点は評価できます。

根深い問題はいつまで経っても事実を知ろうとしない、あるいは知っていながら「あえて」球団を叩きたい人たち。
事あるごとに「楽天叩き」をしたい人たちが一定数いるのは仕方ないことしょう。

しかし、中にはあまりにも悪質な投稿も見受けられました。
こうした悪質な投稿は罰せられるべきです。

この点に対しては強く警報を鳴らしたい。

そして私たちにできることは悪質な投稿を見つけたら通報・ブロックすることです。
ぜひ、この記事を読んでくださっている皆様に協力いただければ幸いです。

これは楽天イーグルス云々の問題ではありません。
あまりにも酷い内容は人間として「言ってはいけない」ことも含まれています。
里崎氏の発言とは比べ物にならない侮辱行為、誹謗中傷行為です。

微力ではありますが、私はこうした投稿を発見した場合、速やかに通報・ブロックしています。
相手にする価値はありません。しかし相手にしてしまうと更にエスカレートします。

静かに追放していきましょう。

本来このようなことは書きたくないですが、今回の件に関してはあまりにも酷かった印象を受けたので、あえて書かせていただきました。

正しく知って楽しく観戦しよう

今回は雨天中止・雨天コールドについて深掘りしていきました。

プロ野球には意外と知られていないルールや慣習が数多く存在します。

全てを知る必要はありませんし、マニアになる必要もありませんが、最低限知っておいたほうがいいことを知っておくだけでプロ野球の楽しみは増えるのは間違いありません。

正しい知識を知り、楽しくプロ野球観戦するのが一番。
そもそも今シーズンは新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れ、一時はシーズン開催すら危ぶまれました。
そのことを考えれば、いまこうしてプロ野球観戦ができるだけありがたいことです。

また、試合開催のためには多くの関係者が尽力していることも忘れてはいけません。

最後になりますが、昨日の試合を最後まで開催できたグラウンドキーパーさんたちに敬意を込めて、7月にアップした動画を掲載しておきます。

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  • コメント ( 4 )

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  1. かんでら

    本記事に会場前の試合開催可否が球団判断のような旨が書かれておりますが、これに関して2020シーズンのみに限り開場前の試合開催可否の判断も連盟判断になっています。

    • イーグルスファン通信【編集長】

      ご指摘ありがとうございます。
      仰る通り2020シーズンは特例ですね。
      コメントいただきありがとうございました。

  2. ではなぜ楽天が有利な時はシートを少ししか敷かず、相手が有利な時はシートを前面にしくのか

    • イーグルスファン通信【編集長】

      そう仰るのでしたら、全ての試合でその状況に該当しているという証明をお願いします。
      その理屈が通るなら、むしろ記事内で触れたホークス戦は最後までやらずに中止すべき試合ではないでしょうか。

      ルールはルール、今回記事にさせて頂いた内容の通りです。
      試合が始まったら、楽天が有利とか不利とかは一切関係ありません。
      私がイーグルスファンだからというわけではなく、他の球場・球団でも同じことです。

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