功労者・主力級選手ウィーラーの電撃トレードに見る石井一久GMのブレない戦略と選手への想い

いよいよプロ野球が開幕。
今シーズンは全120試合のみで、オールスターや交流戦も無し。
更に極力移動を避けるため、1週間のうちに同一カードで6連戦が組まれている変則日程となっています。

先週の開幕カードはバファローズに対して2勝1敗と勝ち越し。
今週は本拠地・楽天生命パークでの東北開幕となり、ファイターズとの6連戦を2勝1敗で後半3連戦に入ります。
順位で言えば4勝2敗の2位で好スタートとなっています。

チーム状況的には全く悪くない、むしろ例年以上に層が厚く期待できる状況となっていますが、そんな中で昨日、衝撃的なニュースが飛び込んできました。

チームにとって中心的な主力級選手であり、実に5年以上在籍する功労者でもあるゼラス・ウィーラー選手がジャイアンツの池田投手とトレードすることが発表されました。

まさに電撃トレードという感じですが、開幕してからのチーム状況や今後を踏まえ、トレードを調整した石井一久GMの戦略や選手に対する想いなどを考えていきたいと思います。

ウィーラーの電撃トレード

ゼラス・ウィーラー選手と言えばイーグルスファンなら誰もが知る人気者であり、ムードメーカーでもあります。
日本での6年目のシーズンを迎え始めた今シーズン、早々にジャイアンツの池田駿投手とのトレードが6月25日、突如として発表されました。

恐らく今月中に移動や手続きが完了し、7月からセ・リーグでプレーすることになるでしょう。

チームにとっては主力級選手であることはもちろん、ベンチにいるときでも明るく他の選手を鼓舞する姿や点が入った時は自分事のように喜ぶ姿は多くのファンにとって印象的だったことは言うまでもありませんね。

石井一久GM・ウィーラー選手のコメント

実際に報道された石井一久GMとウィーラー選手のコメントを引用します。

石井一久GMのコメント

ウィーラー選手のように、しっかりキャリアを積んできた選手が(外国人枠の問題で)1軍の舞台でプレーできないことは、僕としても心苦しかった。ウィーラー選手と話をしたら、出場機会を求めていた。僕自身も米国に行っている時に、違う国でやる苦労は感じていた。野球だけをしに来てる選手に出場機会がないのは、僕としては違うと思った。またウィーラー選手からも『プレーする環境が欲しい』という話もあったので、こちらが(新たな)環境を探していたというのが、今回のトレードのいきさつです

そういう思い(ウィーラーへの思い入れ)があったので、彼の意見を十分に尊重して今回のトレードになった。前から言ってますけど、トレードは悪いものではなくて、やっぱり活躍の場所(になる)。出場機会があることが、プロ野球選手にとって大事なこと

ウィーラー選手のコメント

日本でプレーする機会をいただいたことには感謝してもしきれません。イーグルスのメンバーとしての東北での時間を忘れません。ただ私にはプレーヤーとしてまだやらなければならないことがあります

功労者だからこそ・選手への想い

そもそも今回のトレードが成立した最大の理由はウィーラー選手への配慮だと考えられます。
ご存知の取り外国人選手は1軍でプレーできる上限枠があります。
通常は4名ですが、今シーズンは特例として5名に拡大。それでも野手はブラッシュ・ウィーラー・ロメロ、投手はブセニッツ・宋家豪・シャギワと充実しており、中でも3投手はほぼ当確していました。

最も考えられる可能性は新加入のロメロとウィーラーの1軍争い。
練習試合ではどちらの選手もほぼ均等に出場機会が与えられました。私の個人的な予想では開幕はウィーラーが1軍、ロメロが2軍スタートして、シーズン中盤~終盤、外国人選手が不調やケガで調整の必要が出てきた時にロメロが使われるのでは、と考えていました。

しかしロメロ選手も開幕1軍、レギュラー奪取への想いが強かったようで、実際に状態も良く開幕1軍はロメロとなりました。
そうなるとウィーラーは2軍にいるしかありません。更にロメロは開幕してからも好調をキープ。アクシデントがない限りしばらくは現在の体制が続く可能性が高い状況となりました。

そうなればウィーラーほどの選手をいつまでも2軍でプレーさせるのは勿体ないこと。
それでもいわゆる「飼い殺し」と揶揄されるように放置する球団もある中、石井一久GMをはじめとしたイーグルス首脳陣はウィーラーの出場機会を探すため、トレードの調整を水面下で進めてきたのです。

プロ野球選手が現役でプレーできる時間は限られています。
ましてやウィーラー選手も決してケガなどでプレーできない状態ではありません。確かに練習試合の内容は芳しくありませんでしたが、そこは6年目となる日本での環境ですから今後状態を上げてくることは間違いないでしょう。

こうした背景から、何よりも選手として活躍できる機会を最優先し、他球団と調整を行ない、新たな環境を与えたチームや石井一久GMの行動はまさに選手への想い・選手のことを最大限考えた末のことだと理解できます。

楽天イーグルスは昨オフで同じくチームの功労者であり中心人物とも言える嶋基宏捕手を放出しました。
その時と似たような印象ですが、選手のことを考えるなら当然の判断であり、何ら非情な決断では無いと考えています。

非情だと思うならイーグルスファンを辞めるべき

石井一久氏が楽天イーグルスのGMに就任してから、本当に色々な動きがあります。

以前に比べれば多くのトレードが敢行され、大物選手のFA移籍を成功させ、外国人選手の補強にも余念がありません。
その結果として、まさに今シーズンは勝負の年。現実的に優勝が狙えるくらいの戦力は整っていると感じます。

ウィーラー選手の退団は確かに残念です。
私も一人のイーグルスファンとして彼のプレーは勇気をもらいましたし、応援歌も好きでした。

それでも石井一久GMやウィーラー選手のコメント、実情を推測すれば仕方ないことであり、納得できるものです。

残念ながら、それが理解できず批判的なコメントをSNSに投稿する人も少なからずいます。そういった方々が本当にイーグルスファンなのか分かりませんが、これが非情だと思うならイーグルスファンは辞めるべきです。

事あるごとに批判していたらチームは進歩しません。

別にあなたの好きな選手だけを置いておくことがチームの役割ではありません。そんなに文句を言うなら自分で球団を経営してみろと強く言いたい。

この世界は学生スポーツではなくプロ野球です。勝つことが第一であり、優勝することが何より目指すところです。

ブレない戦略・補強ありきではない

石井一久GMの戦略は以前から「中長期的な強いチーム作り」をすることです。

就任当初は大型補強やFA移籍が目立ちましたが、全部が全部補強ありきではありません。
確かに楽天イーグルスは球団として(親会社も巨大なので)資金的な余裕はあることでしょう。
とはいえ無尽蔵に使えるわけではなく、それ以上に金だけで選手を呼ぶような時代ではなくなってきています。

大きな補強が目立ちやすいのは仕方ないですが、恐らく石井一久GMの理想は大きな補強をしないチーム作りだと推測します。
もちろん補強はするけど、それはあくまでも補強。読んで字のごとく戦力を「補う」ものであり、主力選手は生え抜き選手や若手選手が担うべきだという考えを持っているのではないかと私は推測しています。

特に外国人選手に関しては上限枠もあるため、良くも悪くも過不足ないバランスが求められます。
それ以上に若手選手の台頭こそチームの基盤となることに期待していると考えられます。

実際に浅村栄斗選手が加入したことで内田靖人選手の成長が著しいと石井一久GMも目を細めています。

今回の電撃トレードは確かに驚きましたが、背景や現状を冷静に見れば至極真っ当な判断であり、ブレない戦略と行動には脱帽するばかりです。

最後に、ウィーラー選手、本当に今までありがとうございました。
たくさんの好プレー、ベンチでの姿、真剣な表情を見て何度も熱くなりました。

ジャイアンツでも活躍してくれることを願っています!

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  • コメント ( 2 )

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  1. 通りすがり

    非情だと思うことでイーグルスファンやめる必要もないんじゃないの?選手に思い入れがあってのファンなんだからさ。
    仙台のファンじゃないようなのでコボスタじゃなくて楽天生命パークの「ぬるい」感じが許せないんだろな。俺はあの負けても選手を応援し続ける空気は大好きだよ。

    • イーグルスファン通信【編集長】

      記事を読んでいただき、またコメントもありがとうございます!
      もちろんファンかどうかに資格も基準も無いので辞める必要はないですし、当然ですが権限も何もありません。
      人それぞれ考え方、楽しみ方は自由ですので思い入れのある選手が離れることを良しとしない気持ちも理解はできます。
      しかし賛同や同調はできません、という気持ちを込めてあのように書きました。

      特にいつまで経っても過去をひきずって前を向こうとしない、批判ばかりする一部の「足を引っ張る」ような方々を私はファンと認めたくはありません。
      実際にお会いしたり、SNSのコメントやDMなどで交流させていただくと良い方ばかりです。
      本当はあのような書き方をしたくありませんでしたが、どっちつかずの中途半端な表現はしたくなかったので、自分自身の意見・考え方はハッキリさせたいと考えました。

      私も仙台の温かい応援は気に入っています。日本一にはなりましたが、厳しい時代の方が多かった球団です。
      それがいま徐々に「常勝軍団」に近づいているのにつれて、急激な変化についていけないという気持ちは分からなくもありません。
      やはりプロ野球である以上、勝つことが第一であるべきで、その上で負けてもすぐにヤジらない、批判せず応援するファンの姿勢は好きです。
      コメントいただきありがとうございました!

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