異例の2020年レギュラーシーズンを振り返るーセ・リーグ編ー

例年よりも短かった2020年シーズンも終わってしまい、残すところは日本シリーズのみとなりました。
本記事をアップしている11月23日時点でソフトバンクホークスが2連勝とジャイアンツを圧倒しています。

今シーズンは異例のシーズンでしたが、多くの選手や首脳陣、チームスタッフなどがそれぞれ体調管理、新型コロナウイルス感染症対策をきちんと行ったからこそ、無事レギュラーシーズンを終えることができたのではないでしょうか。
そしてもちろん、私たちプロ野球ファンも制限が多い中でマナーを守った観戦が求められたことも大きかったと思います。

いずれにしても多くの人たちの努力によってレギュラーシーズンを無事終えることが出来たからこそ、読売ジャイアンツの菅野 智之投手開幕から無傷の13連勝を記録したり、中日ドラゴンズの大野 雄大投手の目をみはる活躍などを私たちプロ野球ファンは見ることが出来ました。

改めて「野球がある喜び」を多くの人が感じたのは間違いないでしょう。

そこで今回は12球団の2020年レギュラーシーズンの振り返りをしたいと思います。

まずはセ・リーグの6球団です。

1位 読売ジャイアンツ

<2020シーズンチーム成績>
67勝45敗8分 勝率.598 打率.255 防御率3.34

層の厚さ、そして総合力が他のチームと比べて高かった印象のジャイアンツが堂々のリーグ優勝。
今シーズンのセ・リーグはクライマックスシリーズの開催が無かったため、日本シリーズへの出場も決めました。

ジャイアンツの強さを物語っているのが開幕からシーズン最終戦まで貯金生活を送れた唯一のチームということです。

投打のキーマン

そんな今シーズンのジャイアンツを支えたのはなんといっても菅野 智之投手岡本 和真選手の2選手でしょう。
菅野投手は14勝2敗と圧倒的な成績で12もの貯金を作っています。
今シーズン終了時点のジャイアンツの貯金が22なので、一人でチームの半分以上もの貯金を作ったことになります。

また、岡本選手はシーズン序盤で苦しんでいた坂本 勇人選手、丸 佳浩選手の両選手の不調を一人でカバーするかのような活躍をみせました。
2名の選手が復調してからは少しバットが湿りがちな時期もありましたが、それでも31本ものホームランを放ち、球団としてはあの松井 秀喜氏以来の3年連続30本塁打を記録しました。
また、今年は最多本塁打者賞と最多打点者賞の2つを受賞。その器はまだまだ大きくなりそうな予感です。

トレードでの補強が成功

この2名以外にもチームを支えた選手は多くいますが、シーズン中の戦力補強で獲得した選手たちもその一つと言えるでしょう。

今シーズン、ジャイアンツは積極的なトレードを行うことで戦力強化を行いました。
特に楽天イーグルスとのトレード2件は大成功といえるでしょう。

池田 駿投手とのトレードで入団したゼラス・ウィーラー選手はイーグルス時代と変わらない明るい性格でチームのムードメーカーとなり、チームの顔となっています。

また、高田 萌生投手とのトレードで7月にジャイアンツに加入した高梨 雄平投手のおかげで、中継ぎ陣に貴重な左投手を増やすことに成功。

高梨投手の加入により、原監督はリリーフ陣が登板過多にならないような起用方法ができるようになりました。

終盤は投手が課題に

しかし、そんな自慢の投手陣もシーズン終盤にはプレッシャーと疲れからか防御率が悪化。
日本シリーズでの不安を拭い去れぬままシーズンが終了しました。

中継ぎ投手陣が前半戦のように機能しなくなると、マジックが1桁になってからなかなか勝てない日々が続きました。

そんな後半~終盤戦にかけての明るい要素としては、坂本 勇人選手の2000本安打達成ではないでしょうか。
坂本選手は右打者としては史上最速の速さで2000本安打を達成
不調で苦しんでいたシーズン序盤に囁かれていた「今シーズン中の2000本安打達成は厳しいのではないか」という噂を物ともせず、後半戦以降はチームがなかなか勝てない日々が続く中でも好調を維持し、見事大記録を成し遂げました。

そして、今年は若手選手飛躍の1年でもあります。
昨シーズンの終盤に1軍デビューを果たした戸郷 翔征投手の他、大江 竜聖投手松原 聖弥選手などの活躍が目立ちました。
その他にも、名門・大阪桐蔭高校出身の横川 凱(よこがわ かい)投手湯浅 大選手なども1軍デビューを飾りました。

日本シリーズでのポイントは?

セ・リーグ最強のチーム、ジャイアンツの日本シリーズでのポイントはどのような点なのでしょうか?

まず、大きなポイントは2つあります。

1. 先発投手の起用方法
2. 対周東対策

1つ目の先発投手の起用方法についてですが、第1戦目はエース菅野投手が登板しました。
しかしホークスの若手栗原選手に打ち込まれるなどピリッとせず敗戦。

2戦目は今村 信貴(いまむら のぶたか)投手が先発するも2回もたずにノックアウトしてチームも大敗。
あとを投げた中継ぎ投手の多くが打ち込まれ、結局イーグルスから来た高梨雄平投手と大江投手だけが無失点という投手崩壊しました。
この点はシーズン終盤の不安を払拭できなかったと言えるでしょう。

そしてポイントの2つ目はキャッチャー問題です。

先日発表された日本シリーズ2020出場資格者40人の中に、強肩の小林 誠司選手の名前がありませんでした
小林選手は今季2度の骨折に泣かされ、メンバー漏れとなってしまいました。

ジャイアンツが登録したキャッチャーは4名。
今季、頭角を現した大城 卓三選手、ベテラン・炭谷 銀仁朗選手、若手の岸田 行倫(きしだ ゆきのり)選手、そして1軍出場経験のない山瀬 慎之助選手です。

小林選手不在の中、ジャイアンツはこの4名のキャッチャーで全力でソフトバンクホークスの周東選手の盗塁を阻止しに行かなければなりません。
とはいえ、それ以前に打ち込まれてしまっては捕手のリードにも問題があると言わざるを得ません。

現時点で2戦が終わり2連敗と苦戦しています。
内容的にも力の差を見せつけられており、セ・リーグの代表として戦っているチームとは思えない状況。
少なくとも1勝はして欲しい、そんな厳しい状況に立たされています。

2位 阪神タイガース

<2020シーズンチーム成績>
60勝53敗7分 勝率.531 打率.246 防御率3.35

今シーズン、新型コロナウイルス感染者が2度出てしまうなどコロナ感染に振り回されたタイガース
7月には最下位に沈むなど低迷していた時期もありましたが、8月下旬から盛り返し、最終的には2位でシーズンをフィニッシュしました。

こちらも投打のキーマン

昨シーズンに続き今シーズンもAクラスになれた大きな要因は西 勇輝投手大山 悠輔選手の存在が大きいといえるでしょう。

大山選手はプロ4年目の今年、本塁打と打点でジャイアンツの岡本 和真選手と終盤にデッドヒートを繰り広げました。

西投手はタイガース移籍2年目の今シーズン、11勝5敗、防御率2.26と安定した成績を残しました。
完投数はドラゴンズの大野投手についで2位の4つ。
そのうち完封が2つあり、西投手が先発する試合ではリリーフ陣を温存できました。

中継ぎ陣と守備が不安定

しかし中継ぎ投手陣は不安定な印象を受けました。
藤浪投手を先発から中継ぎに配置転換するなどして層の強化を図りましたが、抑えのスアレス投手以外は相手バッターを圧倒できるほどの投手が見当たりませんでした。

ただしタイガースの場合、中継ぎ投手陣よりも課題の守備力が改善されなかった点が悪目立ちしている印象です。
昨シーズン、チームエラー数がリーグワーストの102だったタイガースですが、今シーズンもその数は73とエラーの数はリーグで2番目に多い数字です。

そして、このエラーがことごとく失点に結びつく、という場面も多く見受けられました。
その証拠にタイガースの投手陣の自責点が396に対して失点は460と失点と自責点の差が64もあります。

守備力強化の課題は来シーズン以降にも持ち越しそうです。

3位 中日ドラゴンズ

<2020シーズンチーム成績>
60勝55敗5分 勝率.522 打率.252 防御率3.84

後半戦のがんばりでAクラス入りした、という印象が強いドラゴンズ。

絶対的エースの躍進

そんなドラゴンズの今シーズンのヒーローはなんと言っても大野 雄大投手
開幕から7月までの7試合は苦しみましたが、8月は3戦3勝3完投(うち完封1)と素晴らしい成績を残しました。
9月以降も毎月完投試合をつくり、終わってみれば驚異の10完投をマークしました。
分業制が当たり前となっている今のプロ野球ではあまり見ない数字です。

勝利の方程式

その他の投手陣では福 敬登(ふく ひろと)投手、祖父江 大輔投手、R・マルティネス投手という強力な3枚壁が確立出来たのもAクラスになった要因の1つといえます。
事実、10月12日時点でドラゴンズリードで6回を終了した場合の勝率はなんと10割。

まさに、完璧な勝利の方程式でした。

正捕手の確立

さらに、正捕手を木下 拓哉選手に固定出来た点も大きいといえるでしょう。
もちろん複数のキャッチャーを起用すれば、同じ投手でも配球にバリエーションが生まれ、対戦チームを苦しめることができる、というメリットもあります。
ただ、木下選手は盗塁阻止率.455と2位のベイスターズの戸柱 恭孝(とばしら やすたか)選手の.352を大きく突き放しての1位です。
これだけ高い数字をもつ選手を正捕手にしない手はありません。

後半戦で驚異の追い上げ

また、注目すべきはドラゴンズの後半戦の戦績です。
ドラゴンズは後半60試合で34勝25敗1分と勝ち越し。

これはリーグ優勝したジャイアンツの戦績(31勝24敗5分)を上回りリーグトップの成績です。
ドラゴンズが後半戦にこの成績を残すことが出来たのは、先に紹介した大野投手の活躍とベテラン大島 洋平選手の活躍が大きいと言えます。

大島選手はリーグ4位の打率.316、146安打を放って最多安打賞を受賞しました。

もし前半から投打が噛み合っていたら、ジャイアンツの対抗馬の筆頭となっていたでしょう。

4位 横浜DeNAベイスターズ

<2020シーズンチーム成績>
56勝58敗6分 勝率.491 打率.266 防御率3.76

後半戦以降失速してしまい、まさかのBクラスとなったベイスターズ。

筒香の穴は埋められたが

打撃面では、昨シーズンまで4番を打っていた筒香 嘉智選手がメジャーに挑戦したことで攻撃力ダウンかと思われましたが、キャプテン佐野 恵太選手の活躍などもあり、昨シーズンと同等かそれ以上に得点力のあるチームでした。

また、ホセ・ロペス選手や梶谷 隆幸(かじたに たかゆき)選手など一発のある打者が多くいたこともジャイアンツと並んでリーグトップのホームラン数になった理由の一つと言えます。

一方、得点数では首位のジャイアンツの532に対し、ベイスターズは516と16点差がありました。

ここから、ベイスターズは攻撃面における流れが欠けていたと考えられます。
事実、ベイスターズは犠打数がリーグ最少の51
また、盗塁数31もリーグ最少盗塁数であることから、足で塁上をかき回せるような選手が少なかったと言えます。

強打者の前にランナーをためて大量得点に繋げることができればAクラス入りも十分あったと考えられます。

来シーズンに向けては、攻撃の多彩化が課題となりそうです。

主力投手の離脱

一方、投手陣は主力投手の怪我に泣かされたという印象を受けます。

エースの今永 昇太投手は開幕投手を務めたものの、肩の故障で夏場に戦線離脱
また、平良 拳太郎投手も開幕当初は防御率ランキングでトップに立つなど、ブレイクしたかのように思われましたが、背中の違和感のため、8月中旬に2軍落ち

これにより左右の先発の柱を前半戦で失うこととなってしまいました。

さらに今年のベイスターズは中継ぎ陣も誤算でした。

入団以来、ベイスターズの守護神として君臨していた守護神・山崎 康晃投手の不調です。
山崎投手は開幕直後から、これまでのすばらしいピッチングからは想像できないほどの絶不調でした。
シーズン前半に中継ぎに配置転換されましたが、それでも不調のトンネルから脱することが出来ず、防御率5.68はキャリアワーストとなってしまいました。

若手選手への期待

ただ、そんなベイスターズにも明るい材料はあります。
明治大学からドラフト3位で入団したルーキーの伊勢 大夢投手の活躍や去年のドラフト1位ルーキーの森 敬斗(もり けいと)選手の台頭です。

特に森選手はシーズン終盤に1軍に昇格すると初打席で2塁打を放つなど、将来が楽しみな選手です。

5位 広島カープ

<2020シーズンチーム成績>
52勝56敗12分 勝率.481 打率.262 防御率4.06

監督が代わるだけでこんなにも苦しむのか、と思わせるほど低迷したカープ。
昨シーズンから特に大きな戦力ダウンもなかったため、5位に終わると予想した方は少ないのではないでしょうか。

投手陣の不振

カープは昨年のドラフトで大学生右腕の森下 暢仁(もりした まさと)投手を獲得し、先発陣は大瀬良 大地投手、クリス・ジョンソン投手と3本柱が組めるほど、強固な先発陣を用意できたかのように思われました。

しかし、いざ開幕してみるとエース大瀬良投手は右肘の不調のため本来の力を発揮出来ず、シーズン中に2度の登録抹消を経験。
9月には右肘の手術に踏み切り、今シーズンの成績は5勝4敗、防御率4.41という不本意な成績で終えることとなってしまいました。

また、来日して5年で60勝近い勝利を挙げていたクリス・ジョンソン投手も、今シーズンは大苦戦。
10試合に登板して、0勝7敗、防御率6.10と目を疑うような成績に終わりました。
あまりの不調から、キャッチャーを會澤 翼選手からベテランの石原 慶幸(いしはら よしゆき)選手に代えるなどの試みも勝利には繋がりませんでした。

また、先発だけではなく中継ぎ陣にも悩まされたシーズンとなりました。
抑えのフランスア投手が開幕から不調
フランスア投手の代わりを任された他の投手も失点するケースが多く、なんとか勝利できても後味の悪い試合が多かった印象を受けます。

打線もパッとせず

さらに、カープは打撃面でもパッとしませんでした。
2016年から3連覇した時期は「タナ・キク・マル」という強力な1,2,3番がいたため、多彩な攻撃が可能でした。
しかし、2018年に丸選手がFAでジャイアンツに移籍し、タナ・キク・マルは解体。

今シーズンはタナ・キクの田中 広輔選手、菊池 涼介選手の2名の選手のバッティングは低空飛行を続け、なかなか上昇のきっかけをつかめぬままシーズンが終了してしまいました。

4番の鈴木 誠也選手も不調により4番の座を松山 竜平選手に譲るなど、理想のオーダーをなかなか組むことができませんでした。

一方、育成から這い上がってきた大盛 穂(おおもり みのる)選手やルーキーの宇草 孔基(うぐさ こうき)選手塹江 敦哉(ほりえ あつや)投手など若手が台頭してきていることもまた事実です。

来シーズン以降は、こういった若手選手の活躍に期待したいところです。

6位 ヤクルトスワローズ

<2020シーズンチーム成績>
41勝69敗10分 勝率.373 打率.242 防御率4.61

2年連続で最下位となったしまったスワローズ。

課題の投手陣は克服ならず

昨年、チーム防御率が4.78と12球団ワーストだった投手陣は今年も改善されませんでした

先発投手陣は去年から手薄だったにもかかわらず、あまりよい補強もできませんでした。

エースの小川 泰弘(おがわ やすひろ)投手が8月にノーヒットノーランを達成するなど今季10勝8敗とまずまずの成績を残しました。

しかし、その他の先発投手は役割を果たせなかった印象を受けます。

開幕投手を任されたベテランの石川 雅規(いしかわ まさのり)投手はわずか2勝に終わりました。

高橋 奎二投手は9試合に先発して1勝3敗、高梨 裕稔(たかなし ひろとし)投手も3勝6敗、ルーキーの吉田 大喜投手は2勝7敗と主な先発ローテーションのメンバーが揃って負け越してしまっています。

主軸の不振と明るい材料

打線は、長年スワローズの中軸を担ってきたバレンティン選手が移籍。

まだ若い村上 宗隆選手とベテランの青木 宣親選手は一定の活躍をしたものの、主力の山田 哲人選手がコンディション不良により、本来の実力を発揮することができませんでした。

一方、他のチームと同様スワローズも将来が楽しみな若手選手が1軍での経験を積むことができました。

武岡 龍世選手や、金久保 優斗投手長岡 秀樹選手濱田 太貴(はまだ たいき)選手、そして注目の奥川 恭伸(おくがわ やすのぶ)投手など多くの選手が1軍戦に出場しました。

特にスワローズは投手陣の強化が重要となってくるので、金久保選手、奥川選手には今シーズンの経験を来年以降に活かしてほしいところ。

また、オフに入ってFA権の行使が注目されていた山田哲人選手の残留が決定。
更に7年契約という長期契約となったことは多くのファンや球団関係者にとって明るい材料であることは間違いありません。

投手力が重要な要素となった2020年のセ・リーグ

今シーズンのセ・リーグはチーム防御率の順位がチーム順位に大きく影響した印象を受けました。

確かに、Aクラスのチームはエースが素晴らしい活躍を見せてくれました。
一方でBクラスに沈んだ3チームは、エースが怪我や故障のため戦線離脱するなど、本来の実力を発揮することができないチームでした。

ここまで投手力が物を言うシーズンはなかなかないとは思いますが、終盤戦で首位のジャイアンツが勝ち積み重ねられなかったことの一因として投手陣が挙げられるように、本当に今年は投手力が重要なシーズンだったと考えられます。

また、今シーズンは例年に比べて多くの若手選手が1軍での経験を積むことができた印象があります。

例年と比べて短いシーズンではありましたが、1軍の試合を経験できたことは大きな糧となりそうです。
特に若手選手が1軍の試合に出場したのはシーズンの終盤戦で観客がある程度入った状態での試合でしたから、プロ独特の雰囲気も少しは感じ取れたのではないでしょうか。

来シーズン以降、どのような若手選手が覚醒するのか、また今年思うような結果を残せなかった選手たちが実力どおりの活躍をみせるのか、早くも来シーズンの開幕が楽しみですね。

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