仕組みや条件などちょっと分かりづらい「FA」をまとめてみた

シーズンも終盤に差し掛かり、優勝争いやCS争いが激化しています。

我らが楽天イーグルスは8月終了時点で単独3位、CS進出あるいは逆転優勝の可能性までありましたが、9月3日からのホークス戦でまさかの3連敗。
あっという間にゲーム差が開き、CSへ進出できるかどうか、という状況になりました。

熱い戦いが繰り広げられるシーズン終盤ではありますが、一方で、チーム関係者としては少しずつ来季に向けた戦力構想を練る時期にもなります。
ちょうどこの記事を書いている9月7日には広島カープの永川投手、赤松選手の引退が発表されました。
また、阪神タイガースのレジェンドと言える鳥谷敬選手が今季限りでタイガースを退団することも決定的となっています。
他方、現在メジャーリーグに在籍している元西武ライオンズ牧田投手の日本復帰の可能性が報道され、楽天イーグルスも獲得に向けて調査をするといった報道もありました。

11月にはドラフト会議が控えていますし、少しずつ来季を見据えた戦力の入れ替え、補強も進んでいく時期です。

そんな時期によく耳にする言葉の1つに「FA権」があります。
他にも「FA権取得」「FA権行使」「FA移籍」「FAで獲得」などというフレーズを耳にしたことがあることでしょう。
このことから、FA権は他の球団に移籍するために必要な資格である、ということはわかります。
しかし、実際にFA権はどのようにしたら得られる資格なのか、そもそもFA権とは何なのか、その仕組みや条件などはちょっと分かりづらい部分があります。

そこで、今回はFA権の概要や仕組みについてまとめてみました。

そもそもFAってなに?

FAの正式名はFree Agent(フリーエージェント)と言います。
意味は「自由に契約を結べる」というものです。
そしてフリーエージェントになることができる資格を満たした選手が得る権利を「FA権」といいます。
FA権保持者で権利を行使したい選手は日本シリーズが終了した日の翌日から土・日・祝日を除く1週間以内にNPBの最高責任者に文書にてFA宣言する旨を申請します。
そして、日本シリーズ終了の翌日から8日目の午後3時にFA宣言選手が公表され、球団と選手の交渉が始まるのです。

選手がFA権を行使する理由

FA権を行使するということは、長年在籍していたチームを自らの意志で離れる決断をした、と言えます。

そもそも、プロ野球選手になるための入り口はドラフト会議です。
ドラフト会議は年に1度開催される、12球団が新戦力を獲得するための会議です。
詳しい説明はここでは割愛しますが、選手側からすれば、どの球団に指名されるのか基本的には分かりません。
稀に自分がどうしても行きたい球団に指名されるようにするため、逆指名や入団拒否といった強気の姿勢を見せる選手もいますが、大部分の選手は自分が指名され、交渉権を獲得した球団と交渉し、入団します。

つまり、言い方は悪いかもしれませんが、基本的には選手側にとって自分が入団するチームは選べません
これがFA権と大きな関りがあると考えています。

プロ野球選手の多くは入団時に高校、大学、社会人のいずれかから入団します。
当然、それまでアマチュアでプレーしていた選手たちですので、プロでどのくらい通用するか分かりません。
一方で、最初に入団したチームで実績を積み重ね、「他のチームでもプレーしてみたい」という感情が湧いてくるのも自然なことです。
なぜなら、繰り返しますが最初に入団するチームを選ぶことは出来ないからです。

そういった背景から、選手がFA権を行使する理由は5つあると考えられています。

1.憧れのチームでプレーしたいから

子供の時からずっと憧れていたチームでプレーするために、FA権を行使する選手です。
プロ野球選手と言えど、1個人としての人格があり、趣味嗜好があります。
純粋に自分も一人のプロ野球ファンである、というプロ野球選手も少なくないでしょう。
であれば、自分が好きな球団、憧れている球団があってもおかしくありません。
前述の通り、プロ野球選手はドラフト会議で指名されるしかないため、自分が憧れる球団、好きな球団を選ぶことは出来ません。
そこで、自らの意志で自分が憧れる球団、好きな球団でプレーしたい、という理由からFA権を取得し、行使する選手がいます。

一例ですが、清原和博選手(西武→巨人)などがこの理由で移籍したと言われています。

2.優勝したいから

プロ野球は毎年順位が入れ替わり、優勝チームも変わります。
とはいえ、どうしても「万年Bクラス」的な立ち位置にいる球団があることも事実です。

毎年Bクラスのチームでは当然、優勝する確率は低くなってしまいます。
そこでFA権を行使して、優勝する確率の高いチーム(主に巨人、ソフトバンク)に移籍する選手もいます。
これはプロ野球選手として、自分の成績がチーム成績にも反映され、結果として優勝することが出来れば、これほど名誉なことはありません。

とはいえ、優勝の可能性が高いチームと言えば、先ほど書いたように巨人やソフトバンクと言った金銭的にも余裕のある球団となります。
そのため、もともと在籍していたチームからすれば、せっかくの主力選手が強豪チームに移籍してしまうのは大きな痛手です。
しかし、選手にも選ぶ権利がある、という観点から、仕方のない現実と受け入れるしかありません。

ちなみに、一例として現役の選手では内川聖一選手(DeNA→ソフトバンク)が優勝したい、という思いからソフトバンクへ移籍したと言われています。

3.地元チームで野球をしたいから

プロ野球選手はシーズンに入ると遠征があるため、あまり自宅にはいられない時期が続きます。
とはいえ、ホームゲームであれば自宅に帰れるので、やはり球団の本拠地がどこにあるのか、というのは1つのポイントになります。

そういった感情の中で、やはり故郷や地元に近いチームでプレーし、最終的にはそこで引退をしたい、という想いでFA権を行使する選手も珍しくはありません。

我らが楽天イーグルスの岸孝之投手は東北、宮城に所縁のある選手で、故郷に恩返しをしたい、という理由から楽天イーグルスへの移籍を決断したと言われています。
地元にとっても嬉しい限りですし、そういった理由であれば放出する側のチームも気持ち良く送り出せるような気がします。

4.高年俸、高待遇がほしいから

プロ野球選手とはいえ、自分の生活やキャリア形成、あるいは人生設計を考えるうえで、給与や報酬面を考慮するものです。
この辺りは一般の社会人が転職をする理由にも似ていますが、より良い待遇を望むのも当然の感情と言えます。

高年俸はその名の通り、今よりもより高い年俸をもらいたいから、というものです。
たとえ同じような成績を残している選手でも、球団によって査定の方法や基準、何より球団自体の財政状況は異なりますので、必然的に年棒も変化します。一定のパフォーマンスが出せるのであれば、より多くの報酬をもらえる可能性がある球団に行きたい、と考えるのも当然です。

また、高待遇とは、例えば複数年での契約を結ぶことや、引退後に移籍したチームで指導者になる道を用意してくれる、といったことが挙げられます。この辺りもプロ野球選手として少しでも長くプレーしたい、あるいは引退後もしっかりと仕事が用意されている球団に行きたい、と考えるのは自然なことです。

一例としては、杉内俊哉投手(ソフトバンク→巨人、引退)などがこの理由で移籍したと言われています。

5.出場機会を増やしたいから

この理由でFA権を行使する選手が多いように感じますが、文字通り今のチームでは出場機会が少ないため、より多くの出場機会を求めて移籍するパターンです。
プロ野球選手である以上、少しでも多くの試合に出場し、パフォーマンスを発揮するのが仕事です。
同じ選手でも、球団の戦力構成によって出場機会も大きく変わります。

例えば、長打力が持ち味の選手でも球団が積極的に外国人選手を獲得するようなチームでは、どうしても役割が被ってしまいます。
そこで、外国人選手ではなく日本人選手で長打力に期待する選手が欲しい、というニーズのチームへ移籍すれば活躍の機会が増える可能性が上がります。

この理由で移籍した選手は多い傾向にあり、
・涌井秀章投手(西武→ロッテ)
・炭谷銀仁朗選手(西武→巨人)
・大和選手(DeNA→横浜)
などが該当すると言われています。

FA権取得条件

では、実際にどうすればFA権を取得できるのでしょうか。
冒頭でも書いたように、FA権はドラフト指名によって入団した選手にとって、自分で移籍先のチームを選べる貴重な権利です。
もちろん、移籍先のチームに必要とされなければならないという話でもありますが、そう簡単に取得できる資格ではありません。

FA権を取得するためには以下の資格を満たす必要があります。

・高卒入団の選手と外国人選手:8シーズンの出場登録日数がある
・大学、社会人入団の選手:7シーズンの出場登録日数がある

ちなみに、出場登録日数とは1軍登録の145日以上/1シーズンです。
また、シーズン中に怪我で1軍の選手登録を抹消された場合でも最長で60日は1軍登録扱いとなります。

したがって、毎年怪我なく1軍でプレーしていたとしても、最低でも7年はかかる計算となります。
ただし、これは単純計算です。実際にはいきなり1年目からバリバリ1軍で出場できる選手は少ないですので、プロ入りから10年行くか行かないか、という時期になります。
もし、怪我などをして1シーズンを棒に振ってしまった場合は8年以上かかってしまうことになるので、FA権取得までの道のりは果てしなく遠いことが分かります。

高卒で入団した選手であれば、だいたい30歳を迎える前後くらいの年齢になります。
とはいえ、この時期はプロ野球選手として肉体的にも技術的にも充実している時期と言えますので、今よりもっと活躍できる可能性、飛躍できる可能性もあると言えます。
一方、一度移籍を決断した以上、次に在籍するチームで引退を迎える、というケースも少なくありません。
近年は30歳後半から40代になっても活躍する選手もいますが、やはりプロ野球選手の選手生活と言うのは決して長いものではありません。

それだけ充実した時期でもあれば、難しい時期とも言えるだけに、FA権を取得したからといって簡単に決断できるものでもない、ということもお分かりいただけるのではないでしょうか。

FA権行使に関わる補償

このように様々な条件や感情も動くFAですが、実際にFA権を行使した選手を獲得した球団は、獲得した選手が在籍していた球団に補償をしなければなりません。
理由としては少しでも戦力の均衡を保ち、放出する側のチームにとって痛手にならないようにするためと言われています。

補償内容は

・金銭補償のみ
・金銭補償と人的補償

のどちらかになります。
また、補償を選ぶ権利はFA権を行使した選手がもともと在籍していた球団です。

FA権を行使した選手が在籍していた球団が金銭補償のみを選択した場合、FAで選手を獲得した球団は移籍する選手の旧年俸の一部を前球団に支払います。
金額は移籍する選手のランクにより異なり、Aランクの選手の場合は80%、Bランクの選手の場合は60%です。

金銭補償と人的補償を選択した場合は「移籍する選手の旧年俸の一部+選手1名」という内容になります。
ここでも支払う金額はランクにより異なり、Aランクの選手の場合は旧年俸の50%、Bランクの選手の場合は旧年俸の40%です。

ちなみに、人的補償には細かい規定があるため、欲しい選手を誰でも獲得できる、というわけではありません。(後ほど解説します)

選手ランクについて

選手は全球団での年俸によりランク付けされます。

・Aランク:チームで1-3位の年俸をもらっていた選手
・Bランク:チームで4-10位の年俸をもらっていた選手
・Cランク:11位以下の選手

ランクのうち、補償が発生するのはA、Bランクの選手のみです。
つまり、FAで選手を獲得する場合には基本的に補償が発生します。

また、Cランクの選手でFA宣言をしてどの球団からも声がかからなかった場合、その選手は前球団に戻ることはできないので、クビになるリスクがあります。
したがって、FA権を取得した選手が全員権利を行使するというわけではありません。

選手をFAで獲得した場合

例えば、1つの球団が2人のFA選手を獲得した場合、その球団は最大で2人の選手を放出しなければなりません。
2人の選手を放出する場合、どちらの球団が先に選手を指名できるのでしょうか。

事例を用いて考えてみましょう。
昨年巨人が西武から炭谷銀仁朗捕手を、広島から丸佳浩選手をFAで獲得しました。
FAが先に決まったのは炭谷選手ですが、人的補償の優先権は西武ではなく広島にありました。
理由は広島が移籍先のリーグと同じリーグの球団だからです。
今回の場合は2人の選手が移籍した球団はセ・リーグの巨人でした。
そして、炭谷選手はパ・リーグの西武、丸選手は巨人と同じセ・リーグの広島から移籍しました。
したがって、広島に優先権が与えられたのです。
ちなみに、2人の選手を同一リーグから獲得した場合は、同年度の勝率の低い球団に優先権が与えられます。

プロテクトリスト

先ほど、人的補償の選手と言っても誰でも獲得できるわけではない、と書きましたが、それがプロテクトリストです。
FAで選手を獲得した球団は、チームの中から手放したくない選手をプロテクトリストにいれます。
プロテクトリストに載せられる選手は28人までです。
また、プロテクトリスト以外の選手でも以下の条件に当てはまる選手は人的補償の対象外です。
・直前のドラフトで入団した選手
・外国人選手

先ほどの例にあった巨人が獲得した2選手(炭谷、丸)において、人的補償として西武ライオンズに内海投手が、広島カープに長野選手が移籍したことで大きな話題となりました。
いずれも巨人に長年在籍し、チームに貢献してきた主力選手と言えますが、今回の件で言えば巨人は内海、長野両選手をプロテクトリストから外していたことになります。

28人という限られた枠の中で、チームの中心選手を入れるのはもちろん、若手選手や伸び盛りの選手など、難しい判断が迫られます。
結果として、長年チームに貢献したものの、近年は活躍の機会が減りつつあった両選手がプロテクトリストから漏れ、西武、広島の両球団がそれぞれ獲得を決めたということになります。

FAは自球団の弱点を補完するための策のひとつ

FA権を持っていても権利を行使しない選手もいます。
楽天イーグルスで言えば、今シーズンオフに則本昂大投手がFA権取得の予定でしたが、異例の長期契約を結んで「生涯楽天」宣言をしました。

また、基本的にFA宣言をする選手はチームにとってのスター選手、主力選手ばかりです。
したがって、自球団のウィークポイントが投手であった場合、その年の投手のスター選手をFAで獲得することができます。
生え抜きの選手を球界を代表する選手に育てることも大切ですが、選手育成には時間がかかります。
そんなときに便利なチーム強化の方法がFAではないでしょうか。

昨シーズンのオフには浅村栄斗選手がFA宣言をして、楽天イーグルスに加入したことも大きな話題となりました。
浅村選手の場合は先ほど挙げた移籍理由のいずれにも当てはまらないと考えられます。
もちろん、待遇面では改善されたかもしれませんが、それが1番ではなく、やりがいを持って、これから成長していくチームに貢献したい、という野心的な理由だったと言われています。

それだけに、今後もFA権を行使する選手の理由と言うのは多様化していく可能性もありそうです。

ただ、あまりFA選手ばかりに頼り過ぎるのも問題です。
その典型的な例が先ほども例に挙げた読売ジャイアンツです。ジャイアンツはもともと圧倒的な資金力でFA権を行使する選手の獲得を積極的にしてきた球団です。
昨年の炭谷、丸選手もそうですし、過去には落合博満(中日)、川口和久(広島)、広沢克己(ヤクルト)、清原和博(西武)、工藤公康(ダイエー)、江藤智(広島)、小笠原道大(日本ハム)、杉内俊哉(ソフトバンク)、村田修一(横浜)、片岡治大(西武)など、毎年のように主力選手をFAで獲得してきました。

また、FA移籍した選手が移籍後に活躍できる保証はありませんので、多額の年棒の割に活躍していないといった批判を浴びる可能性もあります。
当然、大物選手がいきなり加入すれば若手選手の出番は減っていきますので、そうしたチーム内のバランスを考えたうえで、効果的な補強を考える必要があると言えますね。

2019シーズンオフの注目FA選手

最後に、この記事を書いている2019年オフにFA権を取得し、行使する可能性がありそうな注目選手をピックアップしてみましょう。
イーグルスからは則本昂大、美馬学、岡島豪郎選手がFA権取得予定となりますが、前述の通り則本昂大投手は行使しないことになりました。
美馬投手も近年の成績を考えれば、恐らくは行使しないでしょう。
また、岡島豪郎選手も今季は怪我に苦しみ、捕手にコンバートしたことからも、まず残留するでしょう。

楽天イーグルスはそもそもFA権を行使して他球団に移籍する選手が少ない球団でもあります。
良いか悪いかは別として、ファンからすれば気持ち的にはありがたいような感じはしますね。。。

他球団で言えば、広島カープの野村投手と會澤捕手、千葉ロッテの鈴木大地選手、荻野貴司選手、日ハムの中島卓也選手辺りが注目ではないでしょうか。
こればかりは本人の意思が最優先となるので何とも言えませんが、チーム事情やこれまでの実績を加味したうえで、この中から移籍が実現する選手が出る可能性もあります。

最後の最後まで分からないFA選手の動向ですが、いずれにしても新天地で活躍することこそ、放出したチームのファンにとっても、加入したチームのファンにとっても喜ばしいことです。

FA権を行使する選手には往々にして「裏切者」「育ててもらったチームへの想いはないのか」といった厳しい声が出ることもありますが、冒頭でも書いたように、FA権の行使はプロ野球選手にとって数少ない「自分の意思を表現できる権利」でもあります。

選手自身の想いを尊重し、たとえチームを離れても応援し続ける気概を持って私たちファンも見守っていきたいものです。

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