人生を左右する一大イベント!ドラフト会議の仕組みをまとめてみた

プロ野球ファンにとって10月の楽しみと言えば日本シリーズですが、どうしても出場チームのファン以外は蚊帳の外のような感じがするのも事実です。

しかし、自分が応援するチームにとっても重要なイベントといえば、「ドラフト会議」ではないでしょうか。

ドラフト会議はプロ野球界入りを目指すアマチュア選手にとって、自分の進路が決まる大事な一日です。
以前にFA移籍をテーマにした記事で「プロ野球選手は自分で入団したいチームを選ぶことが出来ない」といったことを書きましたが、その理由がまさにこのドラフト会議。
ここで指名されるか否か、そしてどの球団に指名されるかによって、人生は大きく変わります。

今回は、そんなプロ野球の一大イベントのひとつ、ドラフト会議についてまとめてみました。

そもそもドラフト会議とは?

プロ野球ドラフト会議は正式名称を「新人選手選択会議」と言います。
日本プロ野球機構(NPB)が主催しているこの会議は毎年10月に開催され、テレビ中継もされるほど注目が集まります。
このドラフト会議はNPBに所属しているセ・パ合わせて12球団合同で行う、来年度の新人選手を獲得するための会議です。

この会議で指名できる選手は以下の3つの条件をすべて満たした選手です。

・今までプロ野球球団に所属したことがない
・日本国籍保持者、または日本の中学、高校、大学とこれに準ずる学校や団体での在学経験がある
・プロ志望届を所属団体に提出している

上記の条件を満たした選手は会議当日、自分の名前が呼ばれるまで待ちます。
ドラフト会議で指名を受けた選手は後日、指名した球団と個別に契約交渉を行います。
この時に、チームと契約するか否かを決めることができるのです。
ただし、交渉できるのは1チームだけなので、契約を断ればその年にプロ野球選手となることはできません。

また、原則として1球団あたり最大で10名まで指名を行うことが可能です。
ただ、全球団の指名人数の合計が120名に達した場合は、指名を終了していない球団があったとしても、その時点でその年のドラフト会議は終了します。

反対に、全球団が指名を終了しても、その合計人数が120名以下だった場合には、「育成選択会議」が行われます。

プロ志望届

プロ入りを希望する高校3年生の選手と大学4年生の選手は全員、「プロ野球志望届(通称:プロ志望届)」を自身が所属する野球連盟(高校生は日本高等学校野球連盟、大学生は全日本大学野球連盟)に提出しなければなりません。
理由は「プロ志望届の提出をしない=進学もしくは一般企業への就職希望」とみなされてしまうからです。

また、このプロ志望届には提出期限があり、ドラフト会議の2周間前が期限となっています。

ここ数年は、高校生・大学生ともに100名以上がプロ志望届を提出しています。
・2016年 高校生105名、大学生111名
・2017年 高校生106名、大学生105名
・2018年 高校生123名、大学生127名

指名の仕組み

指名の仕組みは1巡目と2巡目以降では全く異なります。これは12球団の戦力を公平にするためです。

1巡目の指名方法

第1順選択希望選手(通称:ドラフト1位)はその年の下位チームから順に開示されますが、この時点で交渉権獲得が決定するのは指名が被らなかった選手と、その選手を指名した球団だけです。

1巡目の選択希望選手で、ある選手Aを指名した球団が複数ある場合、球団は交渉権獲得をかけて「くじ引き」を行います。
このくじ引きで当たりを引いた球団はA選手との交渉権獲得となります。余程のことが無い限り、この交渉権を獲得した球団への入団が決まりますので、ほぼ入団決定の瞬間とも言えます。
注目される選手であればあるほど競合する可能性もありますが、それでも自分のチームに入団して欲しいという思惑を持って指名します。

逆に競合を避けて自分のチームだけが1位指名する可能性が高いであろう選手を指名するという戦略もあります。こうした競合を避けて自分のチームだけが1位指名選手の指名に成功し、交渉権を獲得することを「一本釣り」と呼ばれています。
近年では横浜DeNAベイスターズが2017年に東投手を、2015年には今永投手をそれぞれ1位指名。プロ入り後すぐに活躍する左腕の獲得に成功しました。

一方で、ハズレを引いた球団は再度指名を行わなければなりません。ここで他球団と指名が被らなければ交渉権獲得となりますが、次の指名も他の球団と被ってしまう可能性は十分にあります。その場合は再びくじ引きとなり、当たりを引いた球団が交渉権獲得となります。
このように2度目の1位指名で獲得した選手を「外れ1位」といいます。
「外れ」という言葉がつくと少し残念な印象もありますが、実は多くの外れ1位選手が現在も日本プロ野球界の第一線で活躍しています。下記は外れ1位で入団して活躍している選手の一例です。

坂本 勇人(読売ジャイアンツ、2006年高校生ドラフト)

この年、堂上直倫選手(中日ドラゴンズ)の抽選を外した巨人は坂本選手を指名しました。
坂本選手は高卒2年目から1軍での活躍しはじめ、現在では巨人の主将も務めるなど球界を代表する選手です。

山田 哲人(東京ヤクルトスワローズ、2010年ドラフト)

トリプルスリーで有名な山田選手は、なんと外れ外れ1位入団です。
斎藤佑樹選手(元北海道日本ハムファイターズ)、塩見貴洋選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)と二回もくじ引きに失敗したヤクルトが3度目に1位指名したのが山田選手でした。
高卒1年目から1軍の試合に出場した山田選手は現在、ヤクルトの中心選手として活躍しています。

松永 昂大(千葉ロッテマリーンズ、2012年ドラフト)

藤浪晋太郎選手(阪神タイガース)を外したロッテが外れ1位に指名したのが松永選手。
入団以来毎年40試合以上に登板し、安定した成績を残しています。

オコエ 瑠偉(楽天イーグルス、2015年ドラフト)

我らが楽天イーグルスでは2015年のドラフト1位指名に地元仙台育英の平沢大河選手を指名しました。結果としてマリーンズが交渉権を獲得。次に指名したのが関東一高のオコエ選手でした。
まだまだ期待されている以上の成績を残せていないのも事実ですが、身体は一回りも二回りも大きくなり、これからイーグルスを引っ張っていく存在になってくれることでしょう。

村上 宗隆(東京ヤクルト、2017年ドラフト)

再びヤクルトですが、記憶にも新しい2017年のドラフトで1位指名したのが清宮幸太郎選手でした。ご存知の通り高校時代に注目を集めたスラッガーで、7球団が競合。狭き門を突破できず交渉権を逃しましたが、続いて村上選手を指名。こちらもイーグルス、ジャイアンツと競合しましたが交渉権を獲得することに成功しました。
その村上選手は2年目の今シーズン(2019年)に才能が開花。10代とは思えない堂々としたプレーと豪快なスイングで本塁打、打点を量産しました。
思えば、この年はとにかく清宮幸太郎選手に注目が集まっていました。結果論ですが、村上選手を一本釣りする球団があっても良かったのかもしれませんね。

なお、この「指名→重複→くじ引き」は12球団すべてが1位選手を指名し終わるまで続きます。

2巡目以降

1巡目の指名は「くじ引き」がありますが、2巡目以降の指名に「くじ引き」はありません。
2巡目の指名は「ウェーバー方式」という方式に則って行います。
ウェーバー方式とは、そのシーズンのセ・パ両リーグの成績が低い球団から順に優先的に指名するものです。
また、セ・パどちらのリーグの最下位から指名を開始するかですが、これは交流戦で勝ち越したリーグの最下位チームから指名を始めます。

ただ、今年のドラフト会議からは各リーグが1年毎に指名する方式に変更となりました。
今年はセ・リーグの球団が先に2位選手を順に指名していき、その後にパ・リーグの球団が指名を行います。

そして3巡目は2巡目の反対、「逆ウェーバー方式」で指名が進みます。つまり、リーグ順位が高いチームから順番に指名を行うということです。

1位指名で競合したり注目選手が早々に指名されるケースが多いですが、逆に言えば2位以降は下位の球団から早い者勝ちとなります。他球団の指名を見ながら自球団が欲しい戦力を優先順位を付けながら指名していく、まさに頭脳戦です。

指名された選手は入団拒否できるのか?

実は、プロ入り希望選手には「入団拒否」という選択肢もあります。
「どうしてもA球団でプレーしたい」という断固とした意志のある選手がA球団以外のチームに指名された場合、指名(入団)を断ることも可能です。もちろん、前述の通り1度入団を拒否すれば、その年にプロ野球選手になることは出来ません。
高校生なら大学に進学するか浪人、大学生も浪人やフリーなど所属が無い状態で1年間待たなくてはなりません。また、プロ野球関係者からしても決して印象が良いとは言えませんので、実際に入団拒否する選手はごくわずかです。

それでも、過去に入団拒否をした選手としては江川卓氏や新垣渚氏などが挙げられます。

また、現役選手では菅野智之選手(巨人)や長野久義選手(広島東洋カープ)などがいます。
菅野選手は2011年にファイターズから1位指名を受けましたが、入団を拒否し、翌年巨人にドラフト1位で入団しました。

長野選手は2008年ドラフトでマリーンズに2位で指名されましたが、入団を拒否。翌年、憧れだった巨人に1位で指名を受けました。

ドラフトで人気だった選手たち

ドラフト会議でほとんど避けられないのが1位選手の指名重複。
2球団や3球団競合であればよくあることですが、多い時には6球団以上が一人の選手を指名することがあります。
過去のドラフトで最も競合球団数が多かったのが、野茂英雄氏と小池秀郎氏で、8球団の競合でした。

野茂 英雄氏

野茂 英雄氏は1989年のドラフトで史上最多の8球団から指名を受けた投手です。
近鉄バファローズ、ロッテ、日本ハム、大洋、阪神、ダイエー、オリックスから指名を受けた野茂氏の交渉権を得たのは近鉄でした。
近鉄に入団した野茂氏は1年目から最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率、ベストナイン、新人王、MVP、沢村賞など全部で8つのタイトルを獲得。トルネード投法と呼ばれた独特な投球フォームもインパクトがありました。
日本で活躍した後、日本人としてメジャーリーグに挑戦。今でこそNPBからメジャーリーグの流れは一般的ですが、当時は超少数派で、多くの人に「成功しない」と批判されながらもメジャー挑戦を決断。結果として日本人メジャーリーガー初のノーヒットノーランを達成するなど、日本と変わらない活躍を見せました。現役時代の後半こそ出場機会が減り影をひそめてしまいましたが、記録にも記憶にも残る活躍をみせました。

小池 秀郎氏

1989年ドラフトの翌年のドラフトも、また8球団競合がありました。
小池秀郎氏もまた、西武、ロッテ、日本ハム、近鉄バファローズ、阪神、ヤクルト、中日、広島の8球団から指名を受け、抽選の結果、ロッテが交渉権を獲得しましたが、入団を拒否しました。
その後松下電器に入社し、1992年のドラフト1位で近鉄に入団しました。

近年では2017年のドラフトで7球団競合の末、日本ハムに入団した清宮幸太郎選手や、6球団競合により西武に入団した菊池雄星選手(2009年ドラフト)と大石達也選手(2010年ドラフト)が近年のドラフトの超人気選手です。
残念ながら、大石選手は今年戦力外通告を受け、現役を引退してしまいましたが、清宮選手は1軍で奮闘していますし、菊池雄星選手は現在メジャーリーグで活躍しています。

ドラフトで多くの球団が1位指名するということは、それだけ期待されている証です。もちろん、その期待通りに活躍した選手もいれば、できなかった選手もいますが、どんな成績であれドラフト会議で多くの球団から指名を受けるというのは名誉なものです。

ドラフト下位指名から這い上がった選手たち

一方、ドラフト下位(3位以下)指名ながらも1軍で活躍した選手も数多く存在します。ここでは3名ご紹介します。

福浦 和也選手(ロッテ、今年引退)

福浦選手はロッテ一筋でプロ野球人生に今年終止符を打った選手です。
通算2000本安打を記録するなど、毎年1軍で活躍してきた福浦選手。そんな彼は実はドラフト7位(1993年)入団でした。
しかも驚くことに入団時は投手としてプロ野球のキャリアをスタートしました。しかし、肩の故障から1994年に打者に転向。
そこからゴールデングラブ賞(3回)やベストナインにも選出されるほどの野手になりました。
2019年、多くのファンや関係者に惜しまれながら引退。次なるキャリアが気になるところです。

増井 浩俊選手(オリックス)

増井選手は2009年のドラフト5位で北海道日本ハムファイターズに入団しました。
当初は先発要員として試合に出場していましたが、2011年はセットアッパーとして、2012年からはクローザーとして活躍しています。
2018年オフにFAで「3年・総額年俸9億円(推定)」という大型契約でオリックスに移籍しました。
今年は主にセットアッパーとして起用され、4月には通算150セーブ、9月には通算150ホールドを達成しています。

青木 宣親選手(ヤクルト)

2003年のドラフト4位で東京ヤクルトスワローズに入団した青木選手は2012年にメジャーに移籍し、2017年までメジャーリーグでプレーしていました。
首位打者(3回)、最多安打(2回)、最高出塁率(2回)、盗塁王(1回)など数々のタイトルを獲得しています。
37歳とベテランの域に入った今でもヤクルトの中心選手として第一線で活躍しています。

育成選手制度

ドラフト会議では通常の指名のほかに育成選手の指名を行います。
「育成選手制度」とは、選手の育成を目的として行われるもので、普通のドラフトの後に指名が行われます。いわば、2回目のドラフト会議といったところです。

普通ドラフト入団選手と育成入団選手の違い

育成選手制度は普通のドラフトと違い、指名人数に上限はありません。
また、背番号は原則3桁です。さらに、育成で指名された選手には契約金がありません。かわりに、「支度金」として一人あたり300万円程度が渡されます。

入団後も彼らは原則2軍の試合にしか出場することはできません。ただし、7月末までに2軍の試合で活躍し、力量が認められると1軍の支配下登録選手となり、1軍の試合に出場することも可能です。

今年、育成入団から見事1軍昇格を果たした選手として有名なのが、読売ジャイアンツの山下航汰選手ではないでしょうか。
山下選手は2018年の育成ドラフトで1位指名された高卒の選手です。
入団1年目の山下選手は今年、2軍で打率3割超えの好成績を残し、7月に支配下登録されました。
支配下登録と共に背番号は「009」から「99」に変更となりました。
山下選手の高卒1年目での支配下登録は球団史上初のことです。

育成から日本を代表するまでに大成長を遂げた選手たち

山下選手はまだまだ駆け出しですが、過去には育成選手から侍ジャパン入りを果たした選手もいます。

山口 鉄也氏(元巨人)

2005年、入団テストを経て、育成選手として巨人に入団。2007年に支配下登録され、初勝利を挙げます。
そして2009年には年俸が1億円を超え、WBCの代表にも選ばれました。
育成出身として初めてのオールスター出場や、史上初となる200ホールド達成、9年連続60試合登板など、数々の記録を打ち立て、2017年に第一線から退きました。

千賀 滉大投手(ソフトバンク)

2010年、育成ドラフト4位でソフトバンクに入団した千賀選手は2012年に支配下登録選手となり、2015年から先発ローテーションの一角として活躍。
今年は自身初&育成出身初&令和初のノーヒットノーランを達成しました。
千賀選手もまた、オールスターに出場し、2013年にはオールスターの敢闘選手賞を受賞しています。

このほかにも現役選手では甲斐 拓也捕手(ソフトバンク)や砂田 毅樹投手(DeNA)、西野 勇士投手(ロッテ)なども育成出身でありながらも1軍で活躍するに至った選手たちです。

今年のドラフト会議も注目!

現在のドラフト会議の選手指名方法は指名順位により異なるため、複雑です。
ただ、最近ではテレビ中継で1位から6位くらいまで(育成に行く前までくらい)を放送するようにもなりました。
ドラフト会議が行われるのは平日の昼間が多いので、仕事中だと見れませんが、録画したりニュースで見るなど、様々な方法でドラフト会議を味わうことが出来ます。

また、最近ではドラフト会議の会場に招待してくれるようにもなりました。もちろん応募者多数なので抽選になりますが、当選すれば会場の緊張感や12球団の監督、関係者を近くで見ることが出来る贅沢な時間となります。

今年のドラフト会議も注目です!

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