佐々木朗希投手に詰め寄った白井球審の是非を考える
2022年4月24日(日)の千葉ロッテ対オリックス・バファローズ戦で「騒動」は起きました。
今回はプロ野球コラムとして、一連の行為の是非を考えていきたいと思います。
目次
“騒動”の概要
2回裏、2死1塁の場面で千葉ロッテ先発の佐々木郎希投手が投じた1球。
判定はボール。
対して佐々木投手は苦笑いを浮かべ、不服そうな態度をとりました。
その直後、この日の球審である白井一行球審が佐々木投手に詰め寄り、厳しく指導する場面がありました。
高卒ルーキーの松川捕手もなだめに入りましたが、松川捕手にも威圧的な態度を見せた白井球審。
実際の映像がSNS(Twitter)で拡散されたこともあり、SNSを中心に物議をかもす騒動に発展しました。
20歳にオラつく白井
仲裁に入る18歳#chibalotte pic.twitter.com/GkUGnCHFG9— t@千葉ロッテ (@lotte_0104) April 24, 2022
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ルールを再確認
まず大原則としてルールがどうなっているのか再確認しておきましょう。
プロ野球では「公認野球規則」が公式ルールとなっています。
今回の件では以下の2点が該当すると考えられます。
8.01 審判員の資格と権限(d)
審判員は、プレーヤー、コーチ、監督または控えのプレーヤーが裁定に異議を唱えたり、スポーツマンらしくない言動をとった場合には、その出場資格を奪って、試合から除く権限を持つ
8.02 審判員の裁定(a)
打球がフェアかファウルか、投球がストライクかボールか、あるいは走者がアウトかセーフかという裁定に限らず、審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるから、プレーヤー、監督、コーチまたは控えのプレーヤーが、その裁定に対して、異議を唱えることは許されない。
【原注】 ボール、ストライクの判定について異議を唱えるためにプレーヤーが守備位置または塁を離れたり、監督またはコーチがベンチまたはコーチスボックスを離れることは許されない。もし、宣告に異議を唱えるために本塁に向かってスタートすれば、警告が発せられる。警告にもかかわらず本塁に近づけば、試合から除かれる。
要約すると
どちらも共通して「いかなる人物も審判の判定に異議を唱えてはいけない」と解釈できます。
現代のプロ野球ではリクエスト制度が設けられたため「アウトかセーフか」や「ホームランかファールか」はリプレイ検証できるようになりました。
とはいえ、これらもあくまで「リクエストを行使する権利」であり、「審判の判定に異議を唱えてはいけない」の原則には沿っていると考えられます。
それぞれの言い分
今回の白井球審が詰め寄った騒動にはそれぞれの言い分があります。
それぞれ、とは白井球審を含めた審判側。
そして実際にプレーする選手や監督コーチ側です。
まずは当事者のコメントから事実関係を整理していきましょう。
白井球審のコメント
まず佐々木投手に詰め寄った張本人である白井球審。
残念ながら、試合後の記者の問いかけに対してノーコメント。
実際のコメントは以下の通りと報道されています。
別に話すようなことはないんで。一切、コメントはしないです
井口監督のコメント
千葉ロッテを指揮する井口監督。
2回裏の騒動時にもベンチから白井球審の元へ歩み寄り「もうちょっと冷静にいきましょう」と声をかけたことがわかっています。
また試合後のインタビューでは
判定に対しては、なにかを言ってはいけないと思います。
とルールに沿った基本的な対応を口にした一方、
球審はもっと冷静にやらないといけない。
と苦言も呈したことがわかりました。
佐々木郎希投手のコメント
2022年4月26日時点、実際にボール判定を受けた佐々木郎希投手のコメントは報道されていないと認識しています。
現役選手・OBは賛否両論
プロ野球関係者も今回の騒動について発言が見受けられますが、内容は賛否両論です。
白井球審に理解を示す意見
白井球審に理解を示す意見として、現役メジャーリーガーのダルビッシュ有投手がTwitterで発言しました。
野球の審判って無茶苦茶難しいのに叩かれることはあっても褒められることはほとんどないよなぁ。
選手も散々態度出すんだから審判にも態度出させてあげてください🙇♂️ https://t.co/knUg5ZfuWb— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) April 24, 2022
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野球の審判って無茶苦茶難しいのに叩かれることはあっても褒められることはほとんどないよなぁ。選手も散々態度出すんだから審判にも態度出させてあげてください
ただし、ダルビッシュ有投手は別の媒体で「詰め寄った行動自体は肯定していない」とも発言しています。
また、他には我らがイーグルスの元監督でもあるデーブ大久保氏。
自身のYouTubeチャンネルで以下のようにコメントしています。
白井という人間、ぼくが知ってる限りで言えばめちゃくちゃまっすぐで昭和の審判です
白井だけが悪く言われるのはおかしいですよって動画あげさせてもらいました
白井球審を批判する意見
一方、元プロ野球選手の高木豊氏はYouTubeチャンネルで白井球審の松川捕手への態度に関して批判的なコメントをしています。
松川が止めてる時に白井球審が松川に何か言ってんだよね。「お前、何だ?」っていうような態度だった。佐々木は20歳、松川は18歳。「この若造が」っていう44歳の審判の態度に見えたんだよね。
彼らは2人とも立派なプロ野球選手だから、年齢は関係ない。職業人として扱わないと。佐々木も命を懸けてやってる。松川だって必死にやってるんだよ。だから、試合を止めた、あの松川に対しての態度、これは絶対良くないと思う。
中立的な意見
また、実際にNPBで審判員をしていたNPB元審判部副部長の五十嵐洋一氏は白井球審の性格や人物像も含めて以下のようにコメントしています。
白井くんらしいなと思いましたよ。彼は真面目で熱いところがありますから。ただ、何かあるとパワハラだとか言われる今の時代だとどうなのか…
私が現役でやっていたころなんて、しょっちゅうありましたよ。ボール判定を不満に思い、私のほうを振り向いた捕手に対して『前向いてやれ!』と一喝したり、やじを飛ばしてきたベンチに『文句たれんとやっとけ!』と注意したこともありました。あんまり頭にきたときには『次にど真ん中投げてきてもボールにしてやろう』と思ったこともあります。どんな状況でも冷静、正確に判定しなければいけないのが審判ですが、そこは私たちも人間です。私たちの先輩審判たちの時代には『(判定で)プロの厳しさを教えてやったぜ』なんて話も聞いたことがありますし、白井くんにはそんな昔ならではの審判気質が残っているのかもしれませんね
今回は相手が注目されている佐々木投手ですから、批判の声はやまないでしょう。そもそも若い選手にプロの厳しさを教えるのは審判の仕事じゃありません
私の見解
以上、当事者や関係者、OBなどの声をまとめてみました。
それぞれのコメントに関しての意見は控えますが、楽天イーグルスファンであり、いちプロ野球ファンとして私の意見を書かせて頂きます。
佐々木朗希投手は反省の余地あり
まず白井球審が詰め寄った発端ともいえる佐々木朗希投手の”態度”ですが、私は大きな問題といえるような態度では無かったと考えています。
ストライク・ボールの判定は難しいところであり、テレビで観ていても「おかしいだろ!」と思うことはあります。
中でも投げている当事者にとっては死活問題。
今回の判定そのものが誤審かどうか議論はしませんが、悔しさや疑問が感情として湧いたのは仕方ないことでしょう。
とはいえ、前述の通り公認野球規則でルールが定められている以上、球審や審判員に誤解を招くような行動、表情が良しとは言えません。
何より佐々木朗希投手自身、今後のプロ野球人生において再び白井球審にあたることはあるでしょう。
また他の審判員にも悪い印象がついてしまうと、彼自身にとってマイナスになりかねません。
そういった意味で、今後のためにも今回は反省して、冷静な投球術を披露できるようになって欲しいと期待します。
(イーグルスファンからすると脅威でしかありませんが、いちプロ野球ファンとしての期待です)
一流選手であるほど、投手も捕手も審判との距離感、いい意味での付き合い方を理解してるように思います。
白井球審はやり過ぎた
次に白井球審について。
繰り返す通りルールに沿った対応をするのが審判の仕事。
判定に異議を唱えるような表情をみせた佐々木朗希投手に「注意」をした行動自体はルール通りで真っ当な行動だと考えます。
とはいえ、一言で言えば「やり過ぎ」。
冷静なジャッジをすべき審判という立場でありながら、表情は明らかに激昂・怒りを露わにしていました。
加えて、断じて許されない行動。
それが松川捕手への威圧的な態度です。
百歩譲って佐々木朗希投手への注意は理解できます。
それもやり方は他にあったとは思いますが、あの場で注意すべきと判断したのなら仕方ない。
しかし、なだめに入った松川捕手に対しても「なんだ、お前」という表情と口の動きがありました。
これは決して許されません。
感情的になり、いき過ぎた行動です。
熱くなりやすい性格とか、審判も人間とか、そういった感情論も理解はできます。
だからこそ、立場をわきまえて欲しかったです。
佐々木朗希投手が「まだ若いから許される」と言うつもりもありませんが、白井球審は何年やってるの?とは言いたい。
「この若造が」なんて時代じゃないんですよね。
その点が非常に残念。
まだまだプロ野球界は古い習慣が残る世界なのか、と感じざるを得ません。
教育的指導は古い考え
今回の白井球審の行動に関しては教育的な指導であるという議論もあります。
注目度が高いとはいえ、まだプロ3年目の佐々木朗希投手。
さらにバッテリーを組む松川捕手は高卒ルーキー。
対して大ベテランの域に入っている白井球審からすれば、佐々木朗希投手の表情はプライドを傷つけられる、あるいはおちょくられたように感じたかもしれません。
加えて今シーズンは完全試合を達成。
まさに「無双状態」ともいえる佐々木朗希投手に対して一石を投じる目的が「教育的な指導」に現れていると考えれらます。
なんとも古い考え方ですね。
判定と行動の是非は全く別物
私が今回もっとも重視したいのは、判定と行動の是非は全くの別物だということです。
判定は佐々木朗希投手が不満に感じたボール判定と、その後の注意。
これらに関して素人が何か言えることではありません。
問題なのは行動のほう。
先ほども書いた通り、冷静な判断をすべき球審が感情を露わにしたこと。
挙句の果てに直接関係ない松川捕手に対しても感情をむき出したこと。
そして更に問題だと思っているのが、試合後のコメント。
ノーコメントには疑問です。
試合中は双方興奮状態なので感情が出るのは仕方ないとしましょう。
しかし、試合後は冷静になっているわけで、伝えるべきことは伝えてほしいものです。
例えば以下のようなコメントがあればもう少し理解は深まったと推測されます。
- 感情的になったことはお詫びする
- 判定には自信があるから自分の行動は間違っていない
- 佐々木朗希投手の態度は良くなかったとハッキリ伝える
正解はありません。
ないからこそ、一言自分の真意をいえば良かったのではないかと考えています。
いわば炎上対策ともいえますね。
ノーコメントを貫くと炎上対策としてはかえってマイナスです。
すでにネットニュースを中心に各方面に飛び火しています。
こうした二次対応、三次対応の悪さが白井球審あるいは審判員へのマイナスイメージに繋がっている点は考え物です。
プロ野球審判員の減少に懸念
今回の騒動のまとめとして私が感じたこと。
それは「プロ野球の審判員をやりたい人は減る一方ではないか」ということです。
そもそも日本は少子高齢化社会。
野球人口も減少傾向といわれており、プロ野球選手になりたい人も一昔前に比べれば減少傾向ではないでしょうか。
以前はプロ野球選手になるのが将来の夢と多くの子供たちが語っていた一方、最近では野球そのものの注目が薄れています。
他の魅力的なスポーツや文化など、選択肢の幅が増えたことが要因と言えるでしょう。
更にその中でも「プロ野球の審判員になりたい」と考える人たちがどれだけいるでしょうか。
ダルビッシュ有投手も発言していた通り、審判員は大変な仕事です。
批判されることはあっても褒められることはほとんどない。
あくまでも選手が主役であり、審判はいわば脇役。
とはいえ、審判員がいなければプロ野球そのものが成立しません。
今回の騒動で審判員に対する悪い印象が独り歩きしてしまうことは懸念点と考えています。
白井球審の判定・判断・行動は白井球審自身の問題です。
プロ野球の審判員そのものには、一定のリスペクトが必要だと考えさせられました。
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