時代の変化で増加する変化球(球種)についてまとめてみた

テレビやラジオのプロ野球中継でよく耳にする、
「ストレート、決まりました!三振!」
「シンカーが外れてボール。」
などというセリフ。

これらの言葉を聞いても「球速は速いし、実況や解説の人たちはどうやって球種を判断しているのかわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際には状況によって実況や解説の方でも間違えてしまうこともあります。

また、プロ野球で使われている変化球は時代によっても変化しており、昔はあったけど今は使われていない変化球も存在します。

そこで今回は、こうした変化球(球種)についてまとめてみました。

使う変化球や名前は選手が自分で決める

まず最初に、プロ野球の中継や選手名簿、その他メディアなどで各選手が使用する変化球について記載等があると思います。
当然と言えば当然ですが、そういった自分がどの変化球を使うかは選手自身が決めています。
自分が使う変化球を「持ち球」と言ったりもします。「○○選手は持ち球が多い」といった表現をすると「使用する変化球が多い」ということをお意味します。

このように自分が使う変化球は自分自身の努力、練習で習得していくわけですが、どの持ち球をどう呼ぶか、実は明確な定義はなく、自由です。
それぞれの変化球については後ほどまとめていきますが、例えば楽天イーグルスの守護神、松井裕樹投手はスライダーとカットボールの中間のような変化球を使っており、松井裕樹投手自身は「スラッター」と定義しているそうです。
※スラッターはスライダーとカッター(カットボール)の造語とされています。

各選手が持っている変化球を自分で決め、それを各メディアや実況、解説者が使っているようですね。

変化球は大きく分けると3種類

基本的に変化球はボールの握りや回転によって種類が決まります。

ストレート(直球)は下方向に回転をかけて、ボールの軌道をまっすぐにしています。
※最近ではストレートも純粋に真っすぐ伸びるストレートは「フォーシーム」と呼び、微妙に変化するストレートと分ける傾向になってきています。

反対に、変化球は曲げたい方向に回転をかけることで、ボールの軌道に変化をつけているのです。

そして、主な変化の付け方には以下の3つの種類があります。

・ストレート系
・縦変化系
・横変化系

今回は以上の3種類、計10種類の変化球を中心にフォーカスしつつ、特殊なものや使われなくなった変化球なども見ていきましょう。

ストレート系の変化球

先ほども書いたように、同じストレートでも純粋に軌道がまっすぐ伸びるストレートに対して、打者の手元で少し軌道が変化するストレートも出てきました。これがストレート系の変化球です。
そのようなストレート系の変化球にはツーシーム、ワンシーム、カットボールの3つが代表的です。

ツーシーム

メジャーリーグで使われるようになり始め、徐々にNPBにも浸透してきたツーシーム。
簡単に言えば「手元で僅かに変化する(ブレる)ストレート」です。

空気抵抗を受けるため、投げた瞬間とキャッチャーミットに届く瞬間で球速が異なります。
打者はストレートだと思ってバットを振ると、手元でボールが微妙に変化するため、芯で打つことが難しくなります。

投手の利き腕方向に曲がるのが特徴です。
投げるときはボールの2つの縫い目に指を引っ掛けて投げます。
ちなみに「シーム」とは縫い目のことで、2つの縫い目に指をかけることから「ツーシーム」と呼ばれています。

ツーシームの特徴まとめ

球速:速い
変化:小さい
有効な場面:ゴロやフライなどで詰まらせて打ち損じを狙う
難易度:易

ワンシーム

ボールの1つの縫い目に指を引っ掛けて投げることから「ワンシーム」と呼ばれています。
変化はツーシームとほぼ同じですが、ツーシームよりも落差があります。
また、器用で握力がないと投げることができない難しい変化球です。

投手によっては、最初はツーシームの握りで投球モーションに入り、投げる直前に指をスライドさせてワンシームにする、といった微妙な変化で投げ分ける選手もいるそうです。そのくらいワンシームとツーシームは似ていますが、その微妙な変化でもボールにかかる回転が変わり、打者に到達する際の変化も変わるということです。

日本では巨人の菅野投手がワンシームを使っています。

ワンシームの特徴まとめ

球速:速い
変化:やや有り
有効な場面:ゴロやフライなどで詰まらせて打ち損じを狙う
難易度:難

カットボール

その名前の通り、ボールをカットするように投げるのがカットボール。
簡単に言えば「ストレートとスライダーの中間」です。

ストレートと同じ軌道ですが、カットボールはボール1個分程度、軌道がずれるのが特徴。
空振りを取るというよりは、ストレートのタイミングでも微妙に変化することで打ち損じを誘い、打たせて取る時に有効な球種です。

カットボールの特徴まとめ

球速:速い
変化:やや有り
有効な場面:ゴロやフライなどで詰まらせて打ち損じを狙う
難易度:中

縦変化系の変化球

縦に変化する球種の代表と言えばカーブ。野球人生で初めて教わる変化球がカーブ、と言われているくらい多くの投手がこの変化球を投げます。
しかしカーブの他にもフォークボールやスプリット、チェンジアップやシンカーもあります。

カーブ


カーブは球速は速くありませんが、縦に大きく変化します。
利き腕と反対方向に曲がるのが特徴。(右投手なら左下へ、左投手なら右下へ)

投手はカーブを習得することで、他の球種と球速差を出すことができ、打者のタイミングをずらすことができます。
現在メジャーリーグで活躍するダルビッシュ有投手のカーブはストレートとの球速差が50km以上あると言われています。

ボールを回転させるように投げるカーブは初心者でも投げやすい球種です。
右投手の場合はボールの右半分を、左投手の場合は左半分を重点として握って投げます。

多くの投手が最初に習得する変化球と書きましたが、実際に試合で使うかどうかは別問題です。プロ野球の世界は厳しい世界ですので、ただ「投げられる」だけでは通用しません。その変化球を巧みに操り、相手打者を抑えることが出来て、初めて持ち球と言えます。
そのため、比較的投げやすいカーブですが、あえて使わない投手もたくさんいますし、独自のカーブを磨き上げる投手もいます。

カーブより更に球速を落としたカーブを「スローカーブ」と呼ぶこともありますが、このスローカーブ(カーブ)を武器に活躍した投手として元阪神タイガースの星野伸之氏がいます。
星野伸之氏はストレートの球速が130キロ台と遅く、とてもプロ野球で通用するストレートの球速とは言えませんでした。事実、現代の高校生、あるいは中学生でも140キロ程度のストレートを投げる投手は多くいます。
一般的にもストレートの速さと質を磨き、そこから変化球を磨くというのが常識と言えますが、その常識の逆を行ったのが星野伸之氏でした。
星野伸之氏は「遅い変化球」に磨きをかけ、自身のスローカーブは70キロ台を計測することも多々ありました。

70キロと言えばバッティングセンターで初心者の方や小学生くらいの子たちが打つ速さです。言ってしまえば素人でも打てる球速ですが、130キロのストレートと組み合わせれば実に60キロ近い球速差になります。更にカーブは縦に落ちていくので、タイミングを合わせないとなかなか打てません。

一方で、ソフトバンクホークスの石川柊太投手は通常のカーブよりも「速い球速のカーブ」を投げることから、自分自身で「パワーカーブ」と名付けたことでも知られています。

このように、同じカーブでも様々な切り口、使い方で腕を磨いています。素晴らしい。

カーブの特徴まとめ

球速:遅い
変化:大きい
有効な場面:打者のタイミングを外して空振り、見逃しや打ち損じを狙う
難易度:易

フォークボール


落ちる球」の代名詞とも言えるのがフォーク。

ボールの回転数を少なくし、打者の手元でボールが下に落ちる球種です。
回転数と球速のバランスが難しい球種で、このふたつのバランスが悪いと打者にボールを見切られてしまったり、すっぽ抜けて甘いコースに行って長打を打たれる可能性もあります。
また握力も必要とされるため、主要な変化球であるにも関わらずフォークを投げる投手は意外と多くありません。

ボールを二本の指で開きながら挟むように握るため、フォークのことを「挟んでいる」と言う解説や実況の方もいます。

日本ではソフトバンクホークスの千賀投手のフォークが打者の目の前で急激に落ち、変化が物凄く大きいことから「お化けフォーク」と呼ばれているのは近年話題になっています。
その他、フォークボールを決め球として活躍した選手は野茂英雄氏や佐々木主浩氏がいます。

フォークボールの特徴まとめ

球速:中間
変化:大きい
有効な場面:空振り三振や打ち損じを狙う。追い込んでからの決め球に有効。
難易度:難

スプリット

フォークよりも速い球速で下に落ちるのがスプリット。
簡単に言えば「ストレートとフォークの中間」と言えます。握り方もフォークよりもう少し浅めに挟むようです。

投球フォームがストレートと同じなので、投げた瞬間、打者にはストレートに見えます。それでいて急激に手元で下に沈むので、ボールが消えたように見えてしまいます。

ちなみに正式にはSFFと表現され、スプリット・フィンガー・ファストボールと呼ばれています。ただし、これだと長いのでスプリットと略されることが多いです。

日本ではベイスターズの山崎康晃投手が得意としており、元楽天イーグルス、現ヤンキースの田中将大投手もメジャーリーグに渡ってから決め球としてスプリットを使うようになりました。

スプリットの特徴まとめ

球速:中間
変化:大きい
有効な場面:空振り三振や打ち損じを狙う。追い込んでからの決め球に有効。
難易度:中

チェンジアップ


フォークやスプリットと同じく、ストレートと同じフォームから繰り出されるのがチェンジアップ。

フォークやスプリットとの違いは球速です。チェンジアップは球速が遅いのが特徴。
つまり、うまく行けば打者のタイミングをずらすことができます。一歩で、打者に球種を読まれていた場合はヒットやホームランにもなってしまう球種でもあります。

そのため、チェンジアップはコントロールや打者との駆け引きが重要な変化球と言えます。
投げること自体はそこまで難しくないようですが、こうした理由から緩急をつけるために使う投手もいれば、チェンジアップではなくカーブを緩い球として使う投手もいます。

また、投手によって、ほとんど変化せずボールが止まっているような軌道もあれば、若干シュート回転して緩やかに落ちていくような軌道もあります。軌道の違いはあれど、チェンジアップは握り方が5本の指でボールを包むように握って投げるため、スロー映像で確認しやすい変化球とも言えます。

日本では我らが楽天イーグルスの岸孝之投手や辛島航投手がストレートとチェンジアップを上手く使い分け、緩急を付けています。

チェンジアップの特徴まとめ

球速:遅い
変化:小さい
有効な場面:打者のタイミングを外して空振り、見逃しや打ち損じを狙う
難易度:中

シンカー

投手の利き手方向に曲がりながらも下に落ちる球種がシンカーです。

一般的に変化球は投手の利き手と逆の方向に曲がる方が投げやすく、実際に多く使用されています。(ここまで紹介してきたカーブやカットボールなどがそうです。)

反対に、自分の利き手と同じ方向、つまり右投手なら右方向に、左投手なら左方向に曲がる(落ちる)変化球は難しいです。

シンカーは投手の手を離れてすぐはまっすぐ進みますが、キャッチャーミットに近づくにつれて、ボールは回転しながら利き手の方向に落ちて行きます。球速はあまりでませんが、投げること自体が難しいため、効果的に打者を凡打に打ち取ることができます。

日本では千葉ロッテの石川歩投手、益田投手らがシンカーを使います。

シンカーの特徴まとめ

球速:遅い
変化:中間~大きい
有効な場面:空振りや打ち損じを狙う
難易度:難

横変化系

横に変化する変化球には、主に投手の利き腕方向に曲がるものと利き腕と反対方向に曲がるものの2種類があります。

スライダー

多くの投手が使用する変化球がスライダー。
そのスライダーは利き腕と反対方向にスライドするように曲がるのが特徴です。
カーブと違い、投手の手を離れてからキャッチャーミットに届くまでの間で急に曲がるのがスライダーのもう一つの特徴。

とはいえ、実際に曲がる方向は投手によって異なります。

例えば、現在メジャーリーグで活躍する前田健太投手のスライダーは「ブーメランのような軌道」と表現されるようなスライダーです。スライダー自体は横変化に分類されますが、前田投手のスライダーは落ちるような軌道にもなります。

一方、「平成の怪物」と称された松坂大輔選手は縦変化、横変化など複数の種類のスライダーを持っています。
また、菅野智之選手(巨人)のスライダーはオーソドックスなスライダーで、ボールは真横に変化します。

こうした縦に落ちるようなスライダーを「縦スライダー」や「縦スラ」と呼び、カットボールのように小さく曲がるスライダーを「高速スライダー」と呼んだりもします。

つまり、オーソドックスなスライダーは横変化ですが、実際には縦横、そして速い遅いといったバリエーションが多いのがスライダーの最大の特徴と言えます。そのためカットボールとスライダーも、近年ではかなり近い存在になっており、人によって異なるというのはそういった背景もあります。

スライダーの特徴まとめ

球速:中間~速い
変化:中間~大きい
有効な場面:様々な場面で多用される
難易度:中~難

シュート

スライダーと反対で、投手の利き腕方向に曲がるのがシュートです。
縦変化が少なく、球速が速いため、ストレートと少し似ているのが特徴。そのため、意図してシュートを投げたわけでは無く、ストレートを投げたのに利き手と同じ方向に曲がってしまうストレートを「シュート回転したストレート」いうことはよくあります。

空振りをとるための球種ではないため、カットボールと同じく、打たせて取るピッチングのときに有効です。
特にダブルプレーやファウルでカウントを稼ぎたいときなど、様々なシチュエーションで使える使い勝手の良い球種。
ただ、正しいフォームで投げないと肘に負担がかかってしまう球種でもあるので、習得には注意が必要と言われています。

実際のところ、シュートを積極的に使う投手はあまり多くないですが、我らが楽天イーグルスの石橋良太投手は右打者の内角を鋭く突くシュートを武器に、2019シーズン活躍しました。

シュートの特徴まとめ

球速:速い
変化:小さい
有効な場面:様々な場面で多用される
難易度:中~難

特殊な変化球

近年のプロ野球界はメジャーリーグの影響や外国人投手もたくさん来日することから、実に多くの変化球が使用されるようになりました。
実際に現場の人でも覚えるのに必死なくらいと言われていますが、ここで特殊な変化球も見ていきたいと思います。

ナックル


ナックルは通称「魔球」と呼ばれています。
その理由は変化の仕方。ナックルの変化は投げた投手もリードする捕手も「分からない」のです。
もう少し詳しく説明すると、ナックルは「無回転に近い」投げ方をするとされています。回転が少ないということは空気の抵抗を受けやすいため、空気抵抗によってどこに変化するか分からないのです。
そのため、取る捕手も大変ですし、ましてや打者が捉えるのも一苦労です。

ただ、ナックルを投げるためには球速を出すことが出来ないのと、ほとんど変化しなければ、ただの甘いボールになってしまうリスクもあるので、試合で使う投手はほとんどいません。投げること自体も難しく、それが実践で活用するのも難しいためです。

日本では2019シーズンでナックルを実践で使った投手は確認できていませんが、山崎康晃投手がオールスターで登板した際に投げることで有名になっています。

ナックルカーブ

先ほどの「ナックル」が名前に入っているナックルカーブ。
ナックルのように「どこに変化するか分からない」という変化球ではありませんが、通常のカーブよりも大きな変化をするのが特徴です。
握り方は通常のカーブの握りで、人差し指だけ立てるような握り方をします。その分だけ変化が大きくなるようですが、反対に人差し指への負担も大きくなるので習得は難しい傾向にあります。

主に外国人投手が使っており、2019シーズンでは楽天イーグルスのハーマン投手やホークスのバンデンハーク投手が使っていました。日本人投手では五十嵐亮太投手が使っていたことで知られています。

ほぼ使われなくなった変化球

近年のプロ野球界ではほとんど使われなくなった変化球があります。
それが「パーム」です。パームは握り方がチェンジアップに似ています。
パームは人差し指と中指を起こして立て、残りの3本だけで握るような握り方をします。そのため特徴としてはチェンジアップに似ています。

ただ、近年ではチェンジアップやスライダー、カットボールなどを使用することから、パームを使用する投手はほとんど居なくなっています。

役割別の変化球

最後に、投手の役割と変化球の傾向を見ていきましょう。

ここまで色々な変化球をまとめてきましたが、変化球の種類、持ち球は多いに越したことが無いように感じるかもしれません。
しかし、実施には本文中にも書いたように、「投げられる」だけではダメで、「通用する」必要があります。

そういった意味では投手ごとに与えられた役割によっても変化球の多い少ないは重要な要素になります。
今回は代表的な先発・中継ぎ・抑えの3パターンで見ていきましょう。

先発投手の変化球

先発投手は最も長いイニングを投げる役割のある投手です。

変化球の種類(持ち球)は多い方が理想的です。
とはいえ、同じ変化球でも投げ方によって微妙に異なったり、ストレートとカーブやチェンジアップの球速差で打ち取ることもありますので、単純に種類が多いことが良いというより、多くの引き出しを持っている方が良いといったほうが良いかもしれません。

例えば楽天イーグルスの岸孝之投手は西武ライオンズ時代から日本を代表する名投手です。
岸孝之投手の最大の武器はコントロール。ストレートは150キロ前後で確かに球速もありますが、それが捕手の構えたミット通りにズバッと決まるコントロールは、もはや職人技です。
そのストレートも、ここぞという時の速いストレート以外に、抑えめのストレートもあります。同じように、変化球でもチェンジアップ、カーブを投げますが、やや球速が早く曲がりが小さいチェンジアップもあれば、球速を抑えて落ちていくチェンジアップもあります。

言葉で表現する以上に、実際は微妙な変化ですが、こうした緩急の使い分けや高め低め、内外というコースの使い分けによって、同じ持ち球でも多様な攻め方が出来ます。

ですので、先発投手は持ち球の種類も大事ですが、状況に応じて多様に投げ分けができ、それが実際に投げ切れる投手こそ先発投手の鏡と言えるのではないでしょうか。

中継ぎ投手の変化球

中継ぎ投手は試合の重要な場面できっちりと抑えることが求められます。

その分、投げるイニング自体は短いため、持ち球は少なくても問題ありません
それ以上に「決め球」があるかどうか、武器となる球があるかどうかが重要です。

特に中継ぎ投手のレベルが高いと言われるソフトバンクホークスの中継ぎ陣は軒並み150キロを超えるストレートを持っています。
ただ速いだけではダメですが、やはり短いイニング、少ない打者を確実に抑えるためには、スピードで押し切れることも大きな武器です。

あるいは先発投手のようにコントロールや変化球の使い分けで打ち取る投手もいます。日本ハムファイターズの宮西尚生投手は左のサイドスローでストレートの球速は140キロ前後と決して速くはありません。持ち球もスライダーとカーブがメインですが、状況に応じてスライダーとカーブの中間のような球を投げたり、ストレートもインコースを厳しく突いたりといった投球術で打者を翻弄します。

このようにストレートに磨きをかけるも良し、少ない変化球でも使い分けて打ち取るも良し、それ以上に精神力の方が重要と言えるかもしれませんね。

抑え投手の変化球

抑え投手は中継ぎ投手と限りなく近いですが、最終回に登板するので、より確実に抑えることが求められます。
そういった意味で、中継ぎ投手以上に強力な武器が必要です。
持ち球は少なくても、この武器がハッキリしていれば守護神としては頼もしい限りです。

最も分かりやすい例では、横浜ベイスターズの黄金時代を築いた佐々木主浩氏。持ち球は主にストレートとフォークの2種類とされていましたが、そのストレートは150キロを超える豪速球で、フォークは落差の大きな厳しい球でした。
たとえ2種類だけであっても1イニングを抑えるには十分であり、佐々木投手を擁していたベイスターズは8回までに勝っていなければ試合が終わると言われていたほど絶対的な存在でした。

近年ではホークスの森投手やサファテ投手、藤川投手らが強烈なストレートを武器に、中日の岩瀬投手は鋭く曲がるスライダー、楽天の松井裕樹投手はストレートとチェンジアップのコンビネーション、といった武器を持って活躍しました。

変化球でも直球でも磨き上げること

変化球についてまとめてきましたが、結局は変化球が多ければ良いというものでもないし、「最強の変化球」というのも無いことが分かります。
あくまでも変化球は相手打者を打ち取るための手段であり、また同じ変化球でも投げ方によって微妙に異なります。

そういった意味で近年のプロ野球では多種多様な変化球が存在する反面、「これだ」という武器を磨き上げられている投手は少ない印象もあります。つまり、ただ単に変化球を投げられれば良いのではなく、自分の武器にまで昇格させ、実践で使いこなせる球こそ最高の球と言えるでしょう。

どのような変化球であれ、プロ野球選手が投げる高いレベルの球を打ち返す打者、この駆け引きが最も面白いのかもしれません。

※本記事で表現した変化球の球速、変化、難易度などはあくまでも客観的な表現であり、現実には各選手によって大きく異なります。

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